伝統芸能諸分野では、邦楽器をはじめ衣裳、小道具類等、実演に不可欠な用具が数多く使われているが、近年のグローバル化、産業構造の変化、社会の成熟化、少子高齢化等、様々な情勢の変化に伴い、用具製作の技術者や原材料生産の担い手が後継者不足で減少し、供給が途絶えるなど用具・原材料の入手困難が深刻化し、伝統芸能の活動や伝承者養成等にも影響が出ている。その一方では、海外からの観光客の増加等に伴い我が国の伝統芸能に対する国内外の関心・評価が高まり、伝統芸能の持続的継承や文化的価値等の情報発信が求められている。このためには伝統芸能に使われる用具・原材料の安定的確保、さらには、用具製作の技術者や原材料供給に関わる担い手の養成・技術継承等も必要となっており、入手困難等の問題を抱える用具・原材料や技術者等の現状を正確に把握し、その安定的確保等の課題に対する実効性のある方策が必要となっている。
　本調査は、過去の関連調査報告書等から整理する情報に加え、伝統芸能に関係する諸団体等の協力を得て、用具・原材料等に関する情報を集約し、これをもとに、用具・原材料の供給等に関する実情を調査し、その持続的・安定的な確保に資する方策を検討することを目的として実施したものである。
（文化庁委託）

令和２年度伝統芸能用具・原材料に関する調査事業