大学の卒業・成績等の学修歴証明は、海外では早くは1990年代からデジタル化のナショナル・プロジェクトが起ち上がり、全国の大学での実装が完了している国も多い。しかし、日本では、この4月に実装が完了した国際基督教大学と芝浦工業大学をパイオニアとしてデジタル化が端緒についたばかりの状況にあり、海外諸国から大きく立ち遅れている。
また、近年では、マイクロクレデンシャル、MOOCs、オープン・バッジといったデジタル学修歴証明に関わる新しい概念や技術方式が国内外で脚光を浴び、海外では実装が進んでいるものの、日本での実装は限定的で、これら概念についての理解も表層的なレベルにとどまっている。
こうした状況を踏まえ、本事業は、日本の大学等における学修歴証明のデジタル化に向けた取組を加速化させるための施策を検討・実施するために、文部科学省が「先導的大学改革推進委託事業」の一貫として、公益財団法人未来工学研究所に委託して実施された「諸外国における学修歴証明のデジタル化に向けた導入事例・導入方法に関する調査研究」の報告書である。
本調査研究にあたり、未来工学研究所では、グローバルな第一線の情報技術企業の創業者・経営者・国際機関のリーダーら9か国30余名のインタビューを通じて、グローバルな技術動向をダイナミックに捉えた。その成果として、自己主権アイデンティティ(SSI)の思想に基づく検証可能証明データモデル(VCDM)へと収斂する近未来の技術標準の方向性を見出した。また、「オープン・バッジ」や「MOOCs」については、国際的な最新動向を捉えてその本質に迫ることにより、大学経営にとっての意義や位置づけを明らかにしている。
また、これから学修歴証明デジタル化に取り組む日本の大学にとっての導入ガイドとなるベストプラクティスを、海外主要国におけるナショナル・プロジェクトと日本での先行事例に基づき提示し、加速化のために必要な施策を提言するなど、実用性の高い実践的な報告書となっている。
文部科学省 令和3年度「先導的大学改革推進委託事業」
「諸外国における学修歴証明のデジタル化に向けた導入事例・導入方法に関する調査研究」