インターネットの特質の一つは、ボーダレスであることであり、インターネット上の犯罪や、インターネットを介して重要インフラに対して行われる攻撃、すなわちサイバーテロについてもボーダレスに生起することから、EU諸国を中心として、これら行為のサイバー犯罪としての犯罪化が求められ、サイバー犯罪条約が策定された。我が国もサイバー犯罪条約の策定に参加するとともに、同条約に署名し、既に発効したところである。現在、それに係る刑法、刑事訴訟法及び国際捜査共助法の改正案が国会に提出され、継続審議中である。このような状況下において、サイバー犯罪等をなした人間を識別し、そのなした行為を把握し、分析し、証拠を収集し、裁判において適切な処罰がなされなければならない。しかしながら、そのための証拠収集手続き等に関し各国に基本的な差異があれば、証拠が国際的に利用し得ないことも起こりうる。その上、技術の進展に伴い、証拠収集等についても困難性が増すことが予測され、それに対する技術的対応の必要性もますます増加している。そのような観点からの新しい技術の研究・開発も欠かせないものと考えられる。そこで、日米双方のフォレンジック手続の標準的な手順を把握し、その過程で起きる法的な問題点、相互利用の際に問題になる点さらにフォレンジックに関する新しい技術を調査・研究しようというのが、本研究の目的である。