日本女性におけるやせ(Body Mass Index=BMI<18.5)は20代で約20~25%、30代で約15%(国民健康・栄養調査)と、先進国の中で高い。低栄養状態ともいえる女性のやせは、若年世代(本調査研究では概ね20~30代を対象とする)では卵巣機能、妊孕性、QOLの低下を生じ、妊娠した場合には生まれてくる子どもの出生体重低下を起こすリスクも高める。近年はダイエットから摂食障害につながるケースも増加傾向にあるといわれ、摂食障害のうち神経性やせ症の死亡率は6~20%と高いことから、見過ごすことのできない問題である。
超高齢社会の日本において、貴重な労働力の担い手でもある若年女性が、やせ・低栄養に起因する健康トラブルで休職・離職することは、社会的損失ともいえる。最新の研究では女性のやせ・低栄養が中年期以降も様々な健康リスクを高めることが分かってきており、適切なスクリーニングを実施して高リスク群を早く見つけて適切な指導・治療に速やかにつなげることは、医療費や長期予防等の観点も含め公衆衛生学的課題として重要である。
しかし、介入が必要な者の人数規模や、摂食障害の当事者ないしハイリスク者の割合といった若年女性におけるやせの実態は全く分かっていない。併せて、メディア等によるやせ礼賛の影響によって、学童期からやせ願望が蔓延する社会的背景もあり、リスクへの理解や行動変容を促すにも難しい状況がある。
そこで、課題改善や行動変容を図るために、その前提となる社会背景等の調査を実施し、実態把握や介入方法の方向性を検討した。
日本の若年女性のやせに関する社会背景調査