近年の社会構造や生活環境等の変化によって、文化財の保存に欠かせない伝統的な技術・技能を支える用具・原材料の確保が困難になっている。工芸関係者の間でも、製作活動や伝承者養成等に支障が出るなど伝統工芸の維持・継承が難しくなっている。平成29年度から実施した「伝統工芸用具・原材料に関する調査事業」(以下、過年度調査と言う)でも十数年前の同種調査時に比べ、そうした状況がさらに深刻化していることが明らかとなった。そのため、用具・原材料の量的・質的な維持・安定供給を図ることが急務の課題であり、当事者間の情報共有等の取り組みを推進していく必要があると結論付けた。
本業務は、その成果に基づいて、伝統工芸各分野をはじめとする当事者の間で用具・原材料の持続的な供給確保のための情報交換の取り組みを促進するための機会(座談会)を開催するとともに、情報発信・共有に有用なツールを活用し、情報発信・情報共有の取り組み方などを習得・普及するための研修(講演会)を実施した。これを通じて、用具・原材料の入手難の実態及び問題解決の重要性を広く訴求し、社会全体の伝統工芸分野に対する関心及び文化財保護意識の向上を目指し、無形文化財の保存・保護の充実を図ることを目的として実施したものである。
(文化庁委託)