公益財団法人 未来工学研究所におきましては、2020年度外務省「外交・安全保障調査研究事業費補助金(調査研究事業)」の枠組みで、「我が国の経済安全保障・国家安全保障の未来を左右する新興技術に関する調査研究」を実施しております。
当該研究は、米国、欧州及び中国における合成生物学とニューロテクノロジーに関するR&Dの現状について把握し、これらの技術が、日本の経済安全保障と国家安全保障に与える影響について分析を行うことを目的とするものです。
これらの新興技術の研究は、米国と中国が他国を大きくリードしていますが、中国においては、これらの研究に対して巨額の予算を投じ、また、科学技術の軍民融合政策を推進してきたことにより、これらの民生用と軍用の研究がともに大きく加速していることが明らかになってきました。最近、米国の専門家は、中国のこの流れに対して警戒感を示しつつ、米国が新興技術分野で技術的な優位性を失いつつあるとして、連邦政府に対し、これらの新興技術への投資を強化すること、新興技術研究におけるELSI(倫理的・法的・社会的問題)問題について米国が国際的に指導力を発揮すること、技術情報へのアクセスを制限できるようにすること等、各種対策を求めるようになってきています。
一方、日本に目を向けると、米国や中国と比較して、これらの新興技術の研究に関する取り組みが大きく遅れています。
今回のWebinarでは、以上のような背景を踏まえて、新興技術として合成生物学をとりあげ、パネルディスカッション形式で、経済安全保障とELSI(倫理的・法的・社会的問題)の観点から、合成生物学研究が2030年の社会に与えるインパクトについて考えていきます。
パネルディスカッションでは、ヒト細胞を対象とするゲノム工学の第一人として、また、「ゲノム構築国際コンソーシアム」GP-writeの主要メンバーとして活躍されている東京工業大学の相澤康則先生をモデレータとして、合成生物学のユニコーン企業として世界の注目を集めているギンコ・バイオワークス社の創業者であり、エンジニアリング・バイオロジーとしての合成生物学の基礎を築かれたトム・ナイト博士、並びに、精密医療、ゲノム医療、再生医療などの破壊的技術の社会的・倫理的・政策的側面の分析に関する国際的な研究者であり、GP-writeのELSI(倫理的・法的・社会的問題)諮問委員会のメンバーとして活躍されているロサリオ・イサシ博士をお招きして、経済安全保障とELSIの観点から、合成生物学研究が2030年の社会に与えるインパクトについて議論頂きます。
【開催要領】
■日時:2022年10月20日(木)午前10時~12時
■場所:オンライン開催(Zoom Webinar)※日英同時通訳つき
■主催:公益財団法人未来工学研究所
■参加費:無料
■定員:200名
■締切:10月18日(火)午後5時
■登録:Googleフォーム
【プログラム】
- 10:00-10:05:主催者挨拶
公益財団法人 未来工学研究所主席研究員 多田浩之 - 10:05-10:15:基調講演
(調整中) - 10:15-11:55:パネルセッション
・パネリスト紹介
・パネリスト・プレゼンテーション
(1)Tom Knight博士(ギンコ・バイオワークス共同創業者)
(2)Rosario Isasi研究准教授(マイアミ大学医学部J.T.マクドナルド財団人類遺伝学部門)
・司会者による質問
・質疑応答(参加者)
司会:相澤康則准教授(東京工業大学 生命理工学院) - 11:55-12:00:まとめ
- 12:00:セミナー終了
【Webinarのお申込み方法】
Webinarのお申込みにつきましては、こちらのGoogleフォームからお願い致します。
お申込みの締め切りは10月18日(火)午後5時とさせて頂きます。
【パネリスト紹介】
*トム・ナイト博士(Dr. Tom Knight)
ギンコ・バイオワークス社(Ginkgo Bioworks)創業者。
MIT(マサチューセッツ工科大学)の電気工学部およびコンピュータ・サイエンス学部で、学生として過ごし、長年にわたって、同大学の研究スタッフ、シニア・サイエンティストとして研究に携わる。当初、テクノロジー、アーキテクチャ、プログラミングの各レベルで、新しいコンピューティング構造の開発に取り組む。コンピュータアーキテクト及びVLSI設計者として、Symbolics 社を創立し、技術ディレクターを務めた。
1990 年から、合成生物学の工学的展開の創出に焦点を置いた生物学に関する本格的な研究-具体的には、機能的 DNA コンポーネントの最初の標準アセンブリ技術である バイオブリックス(Biobricks)の開発、「標準生物学的部品の MIT レジストリ(MIT Registry of Standard Biological Parts)」の確立、並びに、「単純生物メソプラズマ・フローラム(Mesoplasma florum)のリバース・エンジニアリングと再構築」に関する研究-を開始。
現在、ギンコ・バイオワークス社にてフルタイムで勤務しつつ、米国科学振興協会(American Association for the Advancement of Science)のフェロー及びIGEM(International Genetically Engineered Machine competition)財団の理事も務めている。
*ロサリオ・イサシ博士(Dr. Rosario Isasi)
マイアミ大学医学部 J.T.マクドナルド財団人類遺伝学部門 研究准教授。同大学法科大学院非常勤教授を兼任。
破壊的技術(精密医療、ゲノム医療、再生医療等)の社会的、倫理的及び政策的側面の特定・分析に焦点を置いた研究を推進。国際比較法、倫理学及び健康格差の分野で独自の専門性を持つ学者として国際的な評価を確立しており、主要な国際的イニシアチブにおいて指導的役割を担っている。
国立衛生研究所(NIH)の「All of Us研究プログラム」のメンバーである南東部登録センター(SouthEast Enrollment Center)の共同研究主宰者を務める。欧州委員会(EC)の「欧州ヒト多能性幹細胞レジストリ(European Human Pluripotent Stem Cell Registry)」の倫理アドバイザー及び国際幹細胞学会(International Society for Stem Cell Research)の倫理委員会の共同議長も務める。国防高等研究計画局(DARPA)の「法・倫理・環境・デュアルユース・責任あるイノベーションパネル(Legal, Ethical, Environmental, Dual-use, and Responsible Innovation Panel)のメンバー及びカナダ保健研究機構(CIHR)の幹細胞監視委員会のメンバーでもある。
【モデレータ紹介】
*相澤康則博士(Dr. Yasunori Aizawa)
東京工業大学 生命理工学院准教授。国際コンソーシアムGP-writeの主要メンバー。酵母ゲノム全合成コンソーシアムSc2.0の参画メンバー(日本からは唯一)。合成生物スタートアップ株式会社Logomixの共同創業者およびCSO。
「ヒト細胞システムの成り立ちの解明」を研究の最終的な目標とする。その目標に向けてまずは、ヒト細胞システムの最下層であるヒトゲノムを、どの従来法よりも大規模にかつ正確に改変する技術UKiS法を開発した。現在はUKiS法を駆使して様々なヒトゲノム領域を改変し、それらゲノム 領域の機能解明を進める一方、産業的に有用なヒト細胞の開発にも着手している。