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携帯電話の基地局(アンテナ)と健康
(原題: Mobile Phone (Cell Phone) Base Stations and Human Health)


日本語訳FAQ:ここでは 英文FAQ(上記原題)の版7.7.5を翻訳した日本語訳FAQ「携帯電話の基地局(アンテナ)と健康」をそのまま継続して掲載しています( 英文FAQは版7.7.5を最後に中止)。 末尾の日本語訳FAQ掲載および英文FAQ中止の経緯略語集、用語説明(訳者による注記)は参考まで。
謝辞: 英文FAQの翻訳、(財)未来工学研究所ウェブサイトへの掲載、さらに英文FAQ中止後の継続掲載をご許可くださったJohn Moulder 博士のご好意に深く感謝します。
以下の日本語訳の内容で不明な点がありましたら、訳者までお問い合わせ下さい。(
訳者: 財団法人 未来工学研究所 本間 純一、連絡先の電子メール j.hommaアットマークiftech.or.jp [「アットマーク」には@を入力して下さい])
要約:このFAQは、携帯電話、PCS電話、その他ポータブルトランシーバー等のための基地局の送信機やアンテナが健康上リスクになるかどうかの問題を扱っています。
英文FAQ全体の完全な更新: 2005年4月3日
英文FAQのWhat's New部分のみの更新:2006年8月13日

英文FAQの版: 7.7.5 
著者:
John Moulder, ウィスコンシン医科大学 放射線腫瘍学科 教授 (米国ウィスコンシン州ミルウォーキー)
アドレス: jmoulder at mcw dot edu


目 次

  1. 携帯電話の基地局とはどのようなものですか? また、その付近での生活、仕事、遊び、通学に係した健康の危険要因はありますか?
  2. 携帯電話の基地局アンテナから受けそうな健康リスクについて、科学者たちはひどく心配していますか?
  3. 携帯電話、PCS電話、アナログ式電話、ディジタル式電話、他の移動電話間の違いは、人の健康に対し基地局アンテナの及ぼしそうな影響を評価するとき、重要になりますか?
  4. 携帯電話の基地局アンテナと他のラジオ・TV放送アンテナの違いは、人の健康に対しそれらのアンテナの及ぼしそうな影響を評価するとき、重要になりますか?
  5. 携帯電話の基地局アンテナは放射を生じますか?
  6. 携帯電話の基地局アンテナからのRFエネルギーは、X線のような電離放射に類似していますか?
  7. 携帯電話の基地局アンテナからのRFエネルギーは、送電線から生ずる「EMF」に類似していますか?
  8. 携帯電話の基地局アンテナの安全ガイドラインはありますか?
  9. これらのRFエネルギーの安全ガイドラインに関する科学的根拠はありますか?
  10. RFエネルギーの安全ガイドラインは全て同じですか?
  11. 米国は携帯電話の基地局の安全ガイドラインを定めていますか?
  12. 携帯電話の基地局アンテナは、安全ガイドラインに適合させることができますか?
  13. 携帯電話の基地局アンテナが安全ガイドラインに適合できないような状況はありますか?
  14. 携帯電話の基地局アンテナが安全ガイドラインに確実に適合するためには、どのような設置上の判断基準が必要ですか?
    1. 一般的な設置上の判断基準にはどのようなものがありますか?
    2. ハイゲインアンテナとローゲインアンテナはどのように違いますか?
    3. 「アンテナゲイン」、「送信機の電力」、「実効放射電力(ERP)」の語句はどういう意味ですか?
    4. ハイゲインアンテナとローゲインアンテナのRFパターンはどのように違いますか?
    5. 携帯電話の基地局アンテナが屋上に設置されている建物の最上階で生活や仕事をしても、安全上問題はないですか?
    6. 携帯電話の基地局アンテナサイト周辺で、使用制限や「セットバック」が義務づけられていますか、また「最短安全距離」とは何ですか?
    7. 携帯電話の基地局アンテナ周辺で働く場合、どのような予防措置が必要ですか?
    8. RFエネルギーのガイドラインに対する携帯電話の基地局の適合性はどのように評価しますか?
  15. 携帯電話の基地局のRFエネルギーと安全性について、他の科学者、学術研究団体、政府の検討グループはどのように述べていますか?
    1. 米国環境保護局と現行のRFエネルギーの安全ガイドライン。
    2. 英・米・仏のTVでの、携帯電話がガンを生ずるかもしれないことを示す新データがある、という主張。
    3. 英国における専門家の学術委員会は、携帯電話の基地局の安全性についてどのように述べましたか?
    4. カナダにおける専門家の学術委員会は、携帯電話の基地局の安全性にについてどのように述べましたか?
    5. 米国における専門家の学術委員会は、携帯電話の基地局の安全性についてどのように述べましたか?
    6. オランダにおける専門家の学術委員会は、携帯電話の基地局の安全性についてどのように述べましたか?
    7. フランスにおける専門家の学術委員会は、携帯電話の基地局の安全性についてどのように述べましたか?
    8. オーストラリアにおける専門家の学術委員会は、携帯電話の基地局の安全性についてどのように述べましたか?
    9. デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデンにおける専門家グループは、携帯電話の基地局の安全性についてどのように述べましたか?
  16. 基地局からのRFエネルギーへの曝露が安全であると示す疫学研究はありますか?
    1. 地理的相関関係の研究
    2. ガンの群発の研究
    3. 職業上の曝露の研究
    4. マイクロ波とモスクワの米国大使館
    5. 携帯電話のRFエネルギーへの曝露の研究
    6. 疫学の論評
  17. 携帯電話の通信で使われるパルス変調のRFエネルギーは、多くの実験室での研究で使用される連続波(CW)のRFエネルギーとは異なる影響を及ぼすことがありますか?
  18. RFエネルギーの影響に対し、比較的敏感なグループ(例えば、子供や大人)は存在しますか?
  19. 携帯電話の基地局アンテナが、心臓のペースメーカーに影響したり、頭痛を生じたり、等々の原因になるでしょうか?
    1. 携帯電話の基地局アンテナは、心臓ペースメーカーのような医療機器に影響を及ぼすでしょうか?
    2. 携帯電話や携帯電話の基地局によって頭痛が生じますか?
    3. 携帯電話や携帯電話の基地局からのRFエネルギーは、生理や行動の変化を生じますか?
  20. RFエネルギーは生体に影響を及ぼすことがありますか?
  21. RFエネルギーがガンを生ずることがあるという再現された証拠はありますか?
  22. RFエネルギーが流産や先天的欠損症を生ずることがあるという証拠はありますか?
  23. RFエネルギーとガンに関する最近の科学実験室での研究から、何が示されますか?
    1. マウスを携帯電話のRFエネルギーに曝露するとリンパ腫が生ずるという1997年の報告。
    2. 齧歯(げっし)類動物を携帯電話のRFエネルギーに長期間曝露した研究。
    3. 動物を携帯電話のRFエネルギーに曝露すると動物の脳細胞にDNA損傷を生ずるという1995年/1996年の報告。
    4. 携帯電話のRFエネルギーは遺伝子毒性であると示唆する欧州連合による2004年の報告(REFLEX報告)。
  24. 人体は携帯電話の基地局付近で受けるよりも多くのRFエネルギーを発生していますか?
  25. さらに多くの情報はどこから得られますか?
  26. 誰がこれらの質問と回答を書きましたか?


最新情報 (What's New)

この部分は、FAQ全体の完全な更新(2005年4月3日)以降に発表された、関連資料の要約です。


質問 と 回答

1)携帯電話の基地局とはどのようなものですか? また、その付近での生活、仕事、遊び、通学に関係した健康の危険要因はありますか?

携帯電話の基地局は、低出力の多チャンネル双方向無線機器です。携帯電話は、低出力の単一チャンネル双方向無線機器です。あなたがこの携帯電話で話すとき、あなた(およびおそらくあなたの周りの何10人もの人々)は近くの基地局に話しかけます。あなたからの電話の呼出しは、その基地局から普通の地上回線の電話システムに入ります。

携帯電話とその基地局は、双方向無線機器であるために無線周波(RF)エネルギーを生じ(これで通信します)、近くの人々をRFエネルギーに曝露します。しかし電話機と基地局は低出力(カバー領域が短範囲)であるために、RFエネルギーの曝露レベルは一般に極めて小さいです。

科学者たちの大多数の一致した意見によれば、米国内でも国際的にも、これら携帯電話の基地局アンテナからの電力は非常に小さいので、人々がアンテナ間近に近づかないよう離れている限り健康の危険要因を生ずることはない、ということです。(Q13およびQ14を参照)

アンテナ(RFエネルギーを発生する物体)と、タワー(塔)やマスト(そのアンテナが取り付けられている構造物)との違いを把握することは重要です。人々が距離を置かなくてはいけないのはアンテナであって、そのアンテナを支えるタワーではありません。

携帯電話の基地局は、多くのさまざまな設計のものがあって、RFエネルギーに人々を曝露する電力・特性・可能性が広範囲に変わる、ということを知っておくことも重要です。


2)携帯電話の基地局アンテナから受けそうな健康リスクについて、科学者たちはひどく心配していますか?

実際は、そうでもありません。携帯電話機自体による人の健康影響について、心配するいくつかの理由はあります(人の健康に対するリスクが実際に存在するというのは確かではありませんが)。この心配は次の理由から来るものです。即ち、電話機のアンテナから使用者の体のごく小さな容積に多くのRFエネルギーが送出されるという理由からです[61]。(あなたが基地局アンテナのすぐ前に立っていない限り)基地局アンテナはそのような「ホットスポット」を作り出さないので、電話機に関する潜在的な安全性の問題は、基地局アンテナには実際は当てはまりません。

携帯電話に関する健康問題の詳細な議論については次を参照してください。


3)携帯電話、PCS電話、アナログ式電話、ディジタル式電話、他の移動電話間の違いは、人の健康に対し基地局アンテナの及ぼしそうな影響を評価するとき、重要になりますか?

いいえ。さまざまな種類の携帯電話の間には、多くの技術上の違いがあります[1, 国際注記1も参照]。しかし健康の危険要因の可能性を評価するとき、唯一の重要な違いは、僅かに異なる周波数でこれら機器が使われていることです。ある基地局(例えば、米国で使われている、以前の800MHzの携帯電話の基地局)からのRFエネルギーは、他の種類の基地局(例えば、米国で使われている1800〜2000MHzの“PCS”電話の基地局)からのRFエネルギーより、いくらか多く人体に吸収されるかもしれません[18]。しかしいったんエネルギーが吸収されてしまうと、影響は同じです。


4)携帯電話の基地局アンテナと他のラジオ・TV放送アンテナの違いは、人の健康に対しそれらのアンテナの及ぼしそうな影響を評価するとき、重要になりますか?

はい、いいえ、のどちらとも言えません。あるアンテナ(特にFMやVHF-TV放送のアンテナ)からのRFエネルギーは、他の発生源(例えば、携帯電話の基地局アンテナ)からのRFエネルギーよりも多く、人体に吸収されます。しかしいったんエネルギーが吸収されてしまうと、基本的に影響は同じです。

FMとTVのアンテナは、基地局アンテナよりも100〜5000倍の電力を送信しますが、通常ははるかに高いタワー(塔)(典型的には800〜1200フィート、すなわち250〜400m)の上に設置されています。


5)携帯電話の基地局アンテナは放射を生じますか?

はい。携帯電話とその基地局アンテナは、双方向無線機器であり無線周波(RF)エネルギーを生じ、これによって動作します。このRFエネルギーは「非電離」であり、その生体影響はX線装置から発生する「電離」放射とは基本的に異なります[Q6を参照]。

このRFエネルギーは、マイクロ波、電波、RF放射(RFR:radiofrequency radiation)またはRF放出(emission)と呼ばれることもあります。健康影響の議論では、電波とマイクロ波の違いは言葉の違いだけです。このFAQ文書では3kHz〜300GHz間の全周波数に対して、「RFエネルギー」あるいは単に「RF」の用語を使用します。


6)携帯電話の基地局アンテナからのRFエネルギーは、X線のような電離放射に類似していますか?

いいえ。電磁エネルギーの生体物質(細胞、実験室での動物または人)との相互作用は、その発生源の周波数に依存します[41]。X線、RFエネルギー、送電線からの「EMF」(電磁界)は全て電磁発生源から生じますが、それら発生源の周波数は非常に異なります。周波数は、電磁界の方向が変化する割合であり、単位ヘルツ(Hz)で表示します。1Hzは毎秒1サイクル(の波)で、1メガヘルツ(MHz)は毎秒百万サイクル(の波)です。

米国の電力は60Hzです。AMラジオは約1MHz(1MHz = 1,000,000Hz)の周波数、FMラジオは約100MHzの周波数、電子レンジは2450MHzの周波数、X線は百万MHzを超える周波数です。携帯電話は、約800と2000MHzの間のさまざまな周波数で使われています[国際注記1も参照]。

X線特有の極超高周波数では電磁粒子は、化学結合を破壊する(電離する)ほどの高いエネルギーを有します。このためX線は細胞の遺伝物質を破壊し、ガンや先天的欠損症を生ずることがあります。それより低い周波数、例えば携帯電話やその基地局で使われている周波数では、粒子のエネルギーははるかに低いので、化学結合を破壊することはできません。このようなわけでRFエネルギーは「非電離」です。非電離放射は化学結合を破壊できないので、電離放射(X線)とRFエネルギーとでは生体影響に類似性はありません[41]。

電磁スペクトル

(訳注) static field:静電磁界、power line:送電線、microwave oven:電子レンジ、heat lamp:太陽灯(医療用)、tanning booth:人工日焼け室、medical x-rays:医療用X線、Wavelength(meters):波長(メートル)、Frequency(Hz):周波数(ヘルツ)、ELF:超低周波、Radio(RF):無線周波、Microwave(MW):マイクロ波、Infrared(IR):赤外線、Ultraviolet(UV):紫外線、Non-Ionizing:非電離の、Ionizing:電離の、Non-thermal:非熱の、Thermal:熱の、Optical:可視光線の、Broken bonds:結合を破壊、Low induced currents:低誘導電流、high induced current:高誘導電流、Electronic excitation:電子励起、DNA Damage:DNA損傷、Heating:加熱、Photochemicaleffect:光電子効果、“CB” phones:市民バンド無線電話、“cordless” phone:コードレス電話、mobile phone:携帯電話。


7)携帯電話の基地局アンテナからのRFエネルギーは、送電線から生ずる「EMF」に類似していますか?

いいえ。送電線は、意味のある非電離放射を生じず、電界と磁界を生じます。非電離放射とは対照的に、電磁界はエネルギーを空間に放射せず、電力を切るとなくなります。送電線の電磁界がどのようにして生体に影響を与えるのか、あるいは実際に生体に影響を与えるのかどうかさえも、明らかではありません。しかし仮に影響があるとしても、高電力のRFエネルギーが生体に影響を及ぼすのとは同じ方法ではありません[2, 41]。送電線の「EMF」の生体影響とRFエネルギーの生体影響との間には類似性はないようです。


8)携帯電話の基地局アンテナの安全ガイドラインはありますか?

はい。携帯電話の基地局アンテナから生ずるRFエネルギーへの公衆の曝露に関し、国内および国際の安全ガイドラインがあります。最も広く受け入れられている基準は、米国電気電子学会と米国規格協会(ANSI/IEEE)[3, 185b]、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)[4]、米国放射線防護測定審議会(NCRP)[5]により策定された基準です。

これらのRF基準は「平面波の電力密度」で表され、それはmW/cu(ミリワット/平方センチメートル)で測定されます[6, 185b]。1800〜2000MHzの範囲で稼働する基地局(例えば、米国のPCS基地局)では、1999年のANSI/IEEEの一般公衆への曝露基準は1.2mW/cuです。約900MHzで稼働するアンテナ(例えば、米国のアナログ式電話の基地局)では、ANSI/IEEEの一般公衆への曝露基準は0.57mW/cuです[7]。ICNIRP基準はこれより僅かに低く、NCRP基準はこれと本質的に全く同じです[8]。

1996年に米国連邦通信委員会(FCC)は、FCCの規制する周波数および機器に関し、RFガイドラインを公開しました。そのガイドラインには、携帯電話の基地局アンテナに関するものも含まれています[9]。携帯電話の基地局アンテナに関するFCC基準は、実質的にはANSI/IEEE基準と同じです[3]。

公衆の曝露基準は、比較的短時間 −ANSI/IEEE、NCRP、FCC基準の場合は30分(携帯電話の周波数で)− にわたる平均の電力密度に適用されます。多数のアンテナがあるところでは、これらの基準は全てのアンテナから生ずるものを合わせた合計の電力密度に適用されます[11]。

また、国際注記10およびErdreich and Klauenberg [108] も参照。


9)これらのRFエネルギーの安全ガイドラインに関する科学的根拠はありますか?

はい。科学者たちがRFエネルギーの生体影響に関する発表文献を全て調査したところ、次のように、多くの重要点で一致していることがわかりました[詳細は、3, 4, 5, 41, 61, 62, 64, 65, 68, 92, 108, 143, 151, 168, 170, 185a, 195, 200, 209, 217, 219, 229を参照]。

  1. RFエネルギーへの曝露は、曝露が十分に強烈であれば、危険になり得ます。可能性のある傷害としては、白内障[185i]、皮膚のやけど、深いやけど、熱ばて[185c]、熱射病[185c]があります。人がRFエネルギーに過剰曝露したときの周知の影響についての議論は、Reeves [83]およびAdair and Black [185c]を参照して下さい。
  2. RFエネルギーの生体影響は、エネルギー吸収率に依存します[6]。広範な周波数範囲(1〜10,000MHz)内で、周波数は全く問題ではありません。
  3. RFエネルギーの生体影響は、エネルギー吸収率に比例します。曝露の期間は全く問題ではありません[65]。
  4. 全身のエネルギー吸収率(この比率は比吸収率(specific absorption rate)またはSARと呼ばれています)が一定の値より低いところでは、生体影響は一貫性のあるものとして示されていません[12]。

この科学的に一致した見解に基づき、さまざまな機関や国々で、安全ガイドライン設定に向けて種々の手法がとられました。その典型的手法は、ANSI/IEEE [3, 185b]およびICNIRP [4]が用いたものでした。


10)RFエネルギーの安全ガイドラインは全て同じですか?

いいえ。基準間には差異があります。ANSI、ICNIRP、FCCは全て、安全ガイドライン設定に際し同じ一般的手法を用いています。しかし異なるグループで使われた物理学(曝露量測定)モデルに差異があるので、最終的な数値に僅かな差異があります[13, 108, 185b]。

多くの国々では、携帯電話の基地局アンテナからのRFエネルギーへの公衆曝露に対し、国独自の規制を行っています。各国の規制のほとんどは、ANSI/IEEE [3]やICNIRP [4]で使われている同じ様式や原理に従っているのですが、各国の規制は異なります。詳細については、国際注記10およびErdreich and Klauenberg [108]を参照して下さい。

いくつかの国々(例えば、スイスやイタリア)では、ANSI/IEEE [3]やICNIRP [4]のガイドラインよりも非常に低い、RFエネルギーの公衆曝露規制を採用しています。一般にこれらの低い数値は、科学の解釈が違うことによるのではなく、政治的な見解に基づいています。


11)米国は携帯電話の基地局の安全ガイドラインを定めていますか?

はい。1996年まで米国連邦通信委員会(FCC)は、1982年版のIEEE/ANSI基準を使用していました。1996年にFCCは、新基準[9]を採用しました。この新基準は、1992年のANSI/IEEE[3, 185b]と1986年のNCRPのガイドライン[5]とを組み合わせたものを基にしていました。

携帯電話の基地局のFCC基準は、900MHzで0.57mW/cu、1800〜2000MHzで1.0mW/cuです。この1996年のFCC基準は、認可された時期とは関係なく、全ての携帯電話の基地局(および他の全ての放送アンテナ)に適用されます。

上述のFCCの電力密度基準は、携帯電話の基地局からのRFエネルギーへの全身の公衆曝露に適用されるものであって、電話機自体からの曝露または職業上の曝露には適用されません。電話機からの曝露に関する議論または職業上のRFエネルギー曝露に関する議論については、FCC OET Bulletin 56 [89]、FCCガイドライン自体[9]、Foster and Moulder [86]、Tell [77]、Q2の参考文献を参照してください。


12)携帯電話の基地局アンテナは、安全ガイドラインに適合させることができますか?

はい。携帯電話の基地局アンテナは、適切に設計することによって、広い許容範囲を持たせ、全ての安全ガイドラインに適合させることができます。

携帯電話の基地局アンテナは、公衆の立ち入り可能区域の上方10m(33フィート)の所に設置し最大強度で作動すると、アンテナサイト付近の公衆の立ち入り可能区域では0.01mW/cu程度の高い電力密度を生ずるかもしれません。しかし公衆の立ち入り可能区域の電力密度は、多くの場合0.00001〜0.0005mW/cuの範囲に収まるでしょう[45, 60, 81, 85, 215]。これらの電力密度は全ての安全ガイドラインよりもかなり低く、しかも基準自体は、潜在的な危険な影響が見られたレベルよりかなり低く設定されています。

アンテナサイト基底部から約200m(650フィート)以内でその基底部上方の高い所(例えば、建物の2階や丘の上)では、電力密度はもっと大きくなるかもしれません。同じタワー(塔)に多数のアンテナがある場合でも、アンテナサイトから高さや距離で40m(130フィート)より遠く離れたあらゆる所で、電力密度はFCCガイドラインの5%よりも低くなければなりません。

アンテナサイトから約200m(650フィート)より遠く離れている所では、高さが増しても電力密度は上がりません。

建物内の電力密度は、屋外よりも3〜20倍低く(即ち、1/3〜1/20に)なるでしょう[42, 85]。

Petersen et al [60]は、携帯電話の基地局周辺の電力密度を測定しました。その測定は、高さ40〜83m(130〜275フィート)のタワー上で1600W ERP(EPR:実効放射電力。アンテナの電力の議論はQ14Cを参照)を放射するアンテナについて行われました。地表での最大の電力密度は0.002mW/cuでしたし、その最大の場所はタワー基底部から20〜80m(65〜265フィート)離れた所でした。タワー基底部から100m(330フィート)以内では、平均の電力密度は0.001mW/cuよりも小でした。これらの最大のRF電力密度は全て、公衆曝露に対するFCC、ANSI/IEEE、ICNIRPの基準の1%よりも小さいです。

1999年にカナダのバンクーバーで、Thansandote et al [81]は5ヵ所の学校でRFレベルを測定しました。そのうち3ヵ所の学校は、校舎上または学校の近くに基地局があるものでした。全ての学校は、広い許容範囲を持って、カナダ、米国、国際のRF基準に適合していました。最大の読取値を下表に掲げます。

カナダにおける携帯電話の基地局付近の学校でのRFエネルギーレベル[81]
学校
基地局の配置
最大のRFレベル
1
道路向いにディジタル式(PCS)基地局
0.00016mW/cu
2
屋上にアナログ式基地局
0.0026mW/cu
3
道路向いにアナログ式基地局
0.00022mW/cu
4, 5
近隣にアンテナはない
0.00001mW/cuより小
 
カナダの基準[国際注記10]
0.57mW/cuより小

2000年に英国放射線防護庁(NRPB)[85]は、17ヵ所の携帯電話の基地局周辺における118ヵ所の公衆の立ち入り可能なサイトで、RFエネルギーレベルを測定しました。あらゆる場所での最大曝露値は0.00083mW/cuでした(屋上にアンテナのある校舎から60m離れた運動場で)。典型的な電力密度は0.0001mW/cuよりも小(ICNIRP公衆曝露ガイドラインの0.01%よりも小)でした。電力密度は、屋内の方が屋外よりも大幅に小さい値でした。全ての発生源(携帯電話、FMラジオ、TV、等々)からのRFエネルギーを考慮に入れたとき、あらゆるサイトでの最大の電力密度はICNIRP公衆曝露ガイドラインの0.2%よりも小でした。詳細は下図に示します。

英国における携帯電話の基地局付近のRFエネルギーレベル
RF電力密度と、携帯電話の基地局アンテナのあるタワーまたは建物の基底部からの距離との関係。Mann et al [85]からのデータ;Moulder et al (Int J Rad Biol 81:189-203, 2005)から改作。

(訳注) Public Exposure Limits:公衆曝露の制限値、Power Dencity:電力密度、Distance from the tower (or building) base (meters):タワー(または建物)基底部からの距離(メートル)、Range:範囲、Average:平均。

2001年に英国貿易産業省無線通信局は、校舎の上(または近く)に携帯電話の基地局のある100ヵ所の学校でRFエネルギーレベルを測定しました。各学校で計測した最大のRFレベルは公衆領域に対するICNIRP基準[4]の1%よりも小でした。即ち、大多数の学校での最大値は、その基準の0.05%よりも小でした。この監査結果は下図にまとめてあります。

英国における携帯電話の基地局付近の
学校でのRFエネルギーレベル
(公衆領域に対するICNIRPガイドラインと対比)

 

英国において近くに携帯電話の基地局のある学校での最大のRFエネルギーレベル(公衆領域に対するICNIRP基準と対比)。英国通商産業省無線通信局の2001年報告から改作。
(訳注) Fraction of School Associated:評価した学校の割合

オーストラリア放射線防護・原子力安全庁(ARPANSA:Austrarian Radiation Protection and Nuclear Safety Agency)の行ったGSM基地局に関する2000年の実態調査から、RFエネルギーへの公衆曝露は同局の基準[169]の0.1%よりも小さいことがわかりました。同局が得た最大の曝露レベルは0.0002mW/cuより小(ICNIRPの公衆曝露ガイドラインの0.01%より小)でしたし、平均の曝露レベルは0.0001mW/cuより小でした。同局が測定したサイト13ヵ所のほとんどで、基地局の信号波よりも強力な他の種類のRF信号波がありました(基地局よりも強力であった事例は、AMラジオで12件、FMラジオでは6件、TVで3件ありました)。測定した全てのどのサイトでも、全ての発信源[携帯電話の基地局、AMラジオ、FMラジオ、VHF TV、UHF TV、ページング(ポケベル)]からのものを合わせた全体のRFエネルギーは、オーストラリア(またはICNIRPまたはFCC)のRF安全ガイドラインの1%よりも小でした。オーストラリアの報告は次のウェブサイトにあります。http://www.arpansa.gov.au/pubs/eme_comitee/rfrep129.pdf

2001年にAnglesio et al [215]が行った報告によれば、イタリア北部の大都市で建物内のRFエネルギー測定でわかったことは、ラジオ/TVの信号波が携帯電話(基地局と端末機)の信号波よりも一般に強力であること、また全ての測定値がイタリアの安全基準(0.01mW/cu)よりも十分低い電力密度を示していることでした[215]。

知られている生体影響を生ずるのに必要なRFレベル、FCC、IEEE、ICNIRP等の安全ガイドラインで規定されるRFレベル、携帯電話の基地局周辺で検出されるRFレベル、これらの関係を下図に示します。

携帯電話の基地局の基準
知られている生体影響を生ずるのに必要なRF電力密度レベル、安全ガイドラインで規定されたRF電力密度レベル、携帯電話の基地局周辺で実測したRF電力密度レベル、これら3つの関係。生体影響を生ずるのに必要なRF電力密度は周波数に依存するため、この図は800と2200MHzとの間の周波数にのみ当てはまります(即ち、これらの周波数は、現在、携帯電話で使われています)。

(訳注) Clear Hazards: 明確な危険要因、Reproducible Effects:再現可能な影響、Unconfirmed Reports of Effects: 影響について未確定の報告、Public Exposure Standard: 公衆曝露の基準、Maximum Measured Near a Mobile Phone Base Station: 携帯電話の基地局付近で測定した最大値、Typical Measured Near a Mobile Phone Base Station : 携帯電話の基地局付近で測定した代表的値。


13)携帯電話の基地局アンテナが安全ガイドラインに適合できないような状況はありますか?

はい。不適当に設計された(即ち、安全性の不十分な)携帯電話の基地局サイトが安全ガイドラインに適合しないことが起こり得る状況はいくらかあります。

アンテナ自体の放射表面から(水平で)8m/25フィート以内の区域に公衆が立ち入ることができるように、アンテナが設置されたならば、管理されていない(公衆の)曝露の安全ガイドラインを超えることが起こるでしょう[14]。これは、建物の屋上や屋根の近くに設置したアンテナで起こり得ます。例えば、Peterson et al [60]によれば、1600W ERP(ERP:実効放射電力)を放射する屋上アンテナから2〜3フィート(1m)の所では、電力密度は(ANSI/IEEE[3]の公衆の曝露基準0.57〜1.2mW/cuと比べて)2mW/cu程度と高いことがわかりました。

タワー上に設置したアンテナで、安全ガイドラインに適合しないような状況はちょっと考えられません。しかし近くの建物にまっすぐに向く携帯電話の基地局アンテナに関する報告(主に北米・欧州以外からのもの)があります。これらのアンテナがFCC、ANSI/IEEEまたはICNIRPの安全ガイドラインに適合するかどうかは、ERP、正確な幾何学的配置、建物によって生ずる遮蔽の程度、これらに依存するでしょう。


14)携帯電話の基地局アンテナが安全ガイドラインに確実に適合するためには、どのような設置上の判断基準が必要ですか?

特別の勧告を行うには、サイト、アンテナ、取り付ける建造物についての詳細な知識が必要ですが、一般的な判断基準はいくらか述べることができます。


14A)一般的な設置上の判断基準にはどのようなものがありますか?
  1. 公衆曝露に関する1999年のANSI/IEEE [3]またはFCC [Q11]のガイドラインを超えた区域に公衆が立ち入ることができないように、アンテナサイトは設計すべきです。一般的な規則として、アンテナの放射表面から8m(25フィート)を超えるところでは、管理されていない(公衆の)曝露ガイドラインを超えることはできません[14]。
  2. 管理されていない(公衆の)曝露に関する1999年のANSI/IEEE [3]またはFCC [Q11]のガイドラインを超えていて、作業者が立ち入ることができる区域がある場合、その区域がどこにあるか、その区域に入るときどのような予防措置を取る必要があるか、これらを作業者に必ず知らせることです。一般的には、これはアンテナの放射表面から8m(25フィート)より内側の区域になるでしょう[14]。
  3. 管理された(職業上の)曝露に関する1999年のANSI/IEEE [3]またはFCC [Q11]ガイドラインを超える区域がある場合、その区域がどこにあるか、その区域に入るとき作業者が送信機の出力を低下(または遮断)できること(そして、これらを実行すること)、これらを作業者に必ず知らせることです。そのような区域は存在しないかもしれませんが、あるとすれば、それらはアンテナの放射表面から3m(10フィート)以内の区域にたぶん限定されるでしょう[14]。

これらのガイドラインに適合するかどうか疑問がある場合は、アンテナ作動後に測定しガイドラインへの適合性を確認すべきです。

FCCガイドライン[9]は、ある種類の基地局について、RFエネルギーの詳細な計算や測定を要求しています[15]。2003年6月にFCCは、これら規則でいくつかの重要な修正を提案しました(注記15参照)。

問題は、あるとすれば、だいたい次に限定されます。

国際注記15を参照。


14B)ハイゲインアンテナとローゲインアンテナはどのように違いますか?

さまざまな種類の基地局アンテナがありますので、それらからのRFエネルギーのパターンは全く異なることがあり得ます。最も基本的に違うのは、ハイゲインアンテナとローゲインアンテナとの違いです。ハイゲインアンテナとローゲインアンテナではその設置方式や安全性の問題が異なるので、それらを区別できることが重要です(アンテナゲインの議論についてはQ14Bを参照)。携帯電話の初期の頃には見るだけで通常は識別できましたが、現在では残念ながら、より新しいアンテナデザインが開発されたり、アンテナを隠す(ステルス)ための手法が多種多様化するために、往々にして見るだけではどのような種類のアンテナが設置されているかを判断するのが不可能になっています。


14C)「アンテナゲイン」、「送信機の電力」、「実効放射電力(ERP)」の語句はどういう意味ですか?

携帯電話の基地局の電力は、普通その実効放射電力(ERP)によって表現され、単位はワット(W)です。この表現の代わりに、携帯電話の基地局の電力は、送信機の電力(ワットで表示)とアンテナゲインで表わすこともできます。

送信機の電力は全電力の尺度であり、一方、ERP(実効放射電力)は主ビームの電力の尺度のです。アンテナが全方向性でかつ効率100%であれば、送信機の電力とERPは同じになるでしょう。しかし携帯電話の基地局アンテナは(全てのアンテナと同様に)全方向の指向性ではなく、指向性は中くらい(ローゲインアンテナ)から大きいもの(ハイゲインアンテナ)まであります。アンテナに指向性があるという事実は、電力をある方向に集中し他の方向にはほとんど出さないということです。アンテナゲインは、アンテナ指向性の程度を示す尺度で、デシベルで測定されます。アンテナゲインに依存して、20〜50Wの基地局送信機は、およそ50ワットないし1000ワット超のERPを発生することになるでしょう。

ゲイン」や「ERP」の概念は、電球の類推で最もよく説明されます。普通の100Wの電球を25Wのスポットライトと比べてみましょう。スポットライトでは、全電力は普通の照明より弱いですが、ビーム中ではかなり明るく、ビーム外ではかなり弱くなります。携帯電話の基地局アンテナ(特にハイゲインのセクターアンテナ)はスポットライトと似ており、ERPはスポットライトの主ビーム中の実効電力に相当します。

これらの問題に関するもっと完全な技術的議論は、NCRP Report No.119 [88]の節 2.2.11を参照して下さい。


14D)ハイゲインアンテナとローゲインアンテナのRFパターンはどのように違いますか?

アンテナのタイプの違いによって、RFパターンは大きく異なります。多くの携帯電話の基地局で以前使われていたタイプの1000W ERP(アンテナの電力とゲインの議論についてはQ14Cを参照)のローゲインアンテナでは、パターンは次のように見えます。

1000W ERPローゲインアンテナ(15mのタワー上)からのRFエネルギーレベル

(訳注) Vertical (side view):垂直方向分布(側面図)、Horizontal (top view):水平方向分布(上面図)、contour:輪郭線。



多くの新設基地局で使われるタイプのハイゲイン(セクター)アンテナでは、パターンは次のように見えます。


単一の1000W ERPハイゲインアンテナ
(13mの建物屋上の上方2mに設置)
からのRFエネルギーレベル

(訳注) Vertical (side view):垂直方向分布(側面図)、Horizontal (top view):水平方向分布(上面図)、contour:輪郭線。

次のことは留意すべきです。ハイハイゲインのセクターアンテナを使う携帯電話の基地局は、これらの送信アンテナをふつう3本(または、ときどき4本)を使い、その全てが違った方向を向くようにしてあるでしょう。


14E)携帯電話の基地局アンテナが屋上に設置されている建物の最上階で生活や仕事をしても、安全上問題はないですか?

一般には、それは問題とはならないでしょう。

  1. Q14Dに示したアンテナパターンからわかるように、ハイゲインアンテナもローゲインアンテナもどちらも、真下にはあまり多くのエネルギーを放射しません。
  2. 建物の屋根は、大量のRFエネルギーを吸収するでしょう。典型的には、屋根は信号強度を5〜10倍(または、補強コンクリートや金属屋根では、それ以上)も減少(即ち、1/5〜1/10以下に減少)すると予想されます。
  3. 最悪ケースの計算からでも、アンテナ下の床上での電力密度は、全ての現行RF安全ガイドラインに適合すると予想されます[43]。
  4. 集合住宅の最上階の部屋や廊下で実測しますと、電力密度は全ての現行RF安全ガイドラインをはるかに下回っていることが確認されます[43]。

14F)携帯電話の基地局アンテナサイト周辺で、使用制限や「セットバック」が義務づけられていますか、また、「最短安全距離」とは何ですか?

RF安全ガイドラインは、携帯電話の基地局アンテナサイト周辺で、セットバックも使用制限も規定していません。というのは、地表での電力レベルは、(自明のこととして)連続的な公衆曝露のガイドラインを超えるような高い値であってはいけないからです(Q8Q12を参照)。

Q13およびQ14で述べたように、アンテナ自体の周辺に使用制限を設定しなくてはならないような状況はあるかもしれません。

携帯電話の基地局アンテナからの「最短安全距離」について、FDA/FCC [128]は次のように述べています。

「携帯電話やPCSの周波数に対するFCCの制限値あるいはそれに近いレベルに曝露するためには、人は無線送信の主信号波のところで(アンテナの高さのところで)かつアンテナから2、3フィート以内のところに本質的に留まっていなければなりません。…さらにセクタータイプのアンテナに関しては、その側面および背後におけるRFレベルは微々たるものです」

安全距離についての上記引用は、アンテナを設置してあるタワー(または建物や構造物)ではなく、実際に放射しているアンテナに当てはまることに注意すべきです。高さ5メートル以上のタワー上に設置した携帯電話の基地局アンテナの場合は、RFエネルギーの安全ガイドラインの値にほとんど近いような区域はどこにも存在してはいけないことになっています。そのため、「最短安全距離」の概念は実際には意味がありません。

ある人々は、基地局は「反応の敏感な」区域から、ある距離を離しておくべきであると主張しています。
この論議の妥当性は、次に示すように、ほとんどありません。

  1. Q12で述べ、また2000年のNRPB報告[85]に記載されているように、地上レベルでの電力密度は、基地局から少なくとも数百メートル離れるまでは、通常は距離が離れても低下しません。
  2. 建物内で生活、仕事または勉強する人々は、建物上にある基地局から受ける曝露の方が、基地局から数百メートル離れたところにいるときよりも、少ないです(Q12と注記85)。
  3. RFエネルギーに対する地上レベルの曝露を確定するには、基地局からの水平方向の距離よりも、アンテナの高さ、アンテナ電力、アンテナパターンの方がもっと大きな要素になります。

さらに携帯電話の使用者がいる区域から基地局アンテナを遠ざけるように移動すると、次のようになるかもしれません。

  1. ハンドセットからの使用者の曝露が増加する。
  2. 基地局アンテナの電力を増す必要がある。
  3. 基地局アンテナを地上上方のもっと高いところに設置する必要がある。
  4. セルサイズが大きくなる。したがって、接続可能な使用者数が制限される。

14G)携帯電話の基地局アンテナ周辺で働く場合、どのような予防措置が必要ですか?

RFエネルギーの職業上の安全ガイドラインに関する詳しい議論は、このFAQの能力範囲を超えてしまいます。

通信アンテナ設置のガイドラインに関する詳しい議論で、Tell [77]は次のように勧告しています。

特定アンテナ設置のガイドライン(Tell [77]による)

  1. 屋根に設置するアンテナは、屋根で作業をする人々の背丈より上部に送信アンテナを配置すること。
  2. 屋根に設置するアンテナは、人々が最も行きそうなところ(例えば、屋根への上り口、電話保守サービス部分、HVAC(高圧交流)器具)から離して送信アンテナを配置すること。
  3. 屋根に設置される指向性アンテナに関しては、外縁部近くにアンテナを配置し建物から離れる方向に向けること。
  4. 大口径アンテナ(最大のRFはより小さい)と小口径アンテナ(見た目の驚きはより小さい)とのバランスを考慮すること。
  5. RF基準は、高い周波数のアンテナ(例えば、1800MHz)より、低い周波数のアンテナ(例えば、900MHz)の方が厳しいことに留意すること。
  6. 立ち入り可能な区域から高出力のアンテナを離すよう、特別の予防措置を講ずること。
  7. できるだけ離れたサイトにアンテナを配置すること。ただし、これは地域の区画条例(訳注:各区画での建物の数や種類を制限する条例)に反するかもしれない。
  8. さまざまな会社の所有になる多数のアンテナを同じ建造物上に据え付ける、「共同配置」サイトの設計では、特別の予防措置を講ずること。このことは、高出力の放送(FM/TV)アンテナを含むサイトに、特に当てはまる。地域の区画では共同配置がしばしば好まれるが、共同配置では「やっかいな」RF安全性の問題が起こることがある。

RFエネルギー曝露を減らすための作業実施要領(Tell [77]による)

  1. アンテナのサイトで働く個々の人には、RFエネルギーの存在、曝露の可能性、曝露を減らすために取り得る手段、これらについて知らせるべきである。
  2. 「もしも、あるサイトでのRFエネルギーが一般大衆の(管理されていない)曝露のFCC基準を超えることがあるなら、そのサイトには適当な標識を掲示すべきである」[Per Richard Tell, 個人的な通知情報, 2000年2月]
  3. あるサイトでのRFエネルギーレベルは、そのサイトの建設前にモデル化して調べるべきである。
  4. あるサイトでのRFエネルギーレベルは、計測すべきである。
  5. すべてのアンテナが常時作動しているものと想定すること。
  6. アンテナの作業に取りかかる前に、すべての附属送信機を機能停止(ロックアウト)すること。
  7. すべての送信機が本当に停止されたことを確認するために、パーソナルモニターを用いること。
  8. アンテナから安全な距離を保つこと。「[RFエネルギー]曝露を低く保つための実施指針としては、どの[電気通信]アンテナからも距離で3〜4フィート[1〜1.2m]離れていること」[77
  9. 「動き続けること」、また「アンテナに卑近なところでは、不必要な長引く曝露を避けること」
  10. あるサイト(例えば、限られた場所に複数のアンテナがあり、そのうちのあるアンテナが運転停止できないようなところ)では、防護服を着用する必要があるかもしれない。
  11. ほとんどのサイトでは、「非RF」の多くの危険要因(例えば、危険な機械、電気ショックの危険要因、転落の危険要因)があることに留意すること。したがって、あるサイトでは公認の訓練を受けた人だけを許可すること。

また、基地局アンテナ近くの屋上にいる人に対する実際の曝露レベルの分析については、Bernardi et al [96]を参照して下さい。


14H)RFエネルギーのガイドラインに対する携帯電話の基地局の適合性はどのように評価しますか?

適合性は、測定または計算によって評価できます。この両方の方法では、RFエネルギーという物理現象をしっかり理解することが必要です。測定には複雑で高価な装置を扱うことが要求され、計算にはあるサイトにおける各アンテナについての電力、アンテナパターン、幾何学構造の詳細な知識が要求されます。

適合性の評価または曝露レベルの推計にふさわしいものでは、アンテナサイトからの距離ほど簡単なものは他にありません[85, 113]。Q12で述べ図示したように、RFエネルギー曝露は人が携帯電話の基地局サイトに近づいても増すこともないかもしれません。

計算:基地局アンテナについて、その実効放射電力(ERP)、アンテナパターン、高さ、これらがわかっていれば(ERPとゲインの議論についてはQ14Cを参照)、地上レベルの電力密度について「最悪ケース」の計算ができます。しかし計算方法は簡単ではなく、ERPとアンテナパターンはたいていの場合、わかっていません。関連する技術仕様が全てわかっていれば、どの程度正確な計算ができるかの1例については、Barbiroli et al [162]を参照して下さい。

測定:携帯電話の基地局からの電力密度を実際に測定するには、複雑で高価な装置と多くの技術的知識が必要です。送電線の電磁界を測定するために設計された計器、および電子レンジを検査するために設計された計器は、基地局の測定には適しません。基地局がANSI/IEEE、FCC、またはICNIRPのガイドラインに適合すると判断するのは「比較的に容易」ですが、その必要な計器の費用は2000USドル以上がゆうにかかります。基地局アンテナからの電力密度を実際に測定するのは、典型的なサイトでは他に多くのRFエネルギー発生源があるため、もっと難しいです(Mann et al [85]およびLine et al [169]を参照)。

測定技術ならびに計測装置の装備についての技術的な議論は、Mann et al [85]、NCRP Report No.119 [88]、Line et al [169]を参照して下さい。


15)携帯電話の基地局のRFエネルギーと安全性について、他の科学者、学術研究団体、政府の検討グループはどのように述べていますか?

この項では、他の科学者、学術団体、政府の検討グループがRFエネルギーの安全性および携帯電話の基地局についてどのように述べたかをまとめてあります。


15A)米国環境保護局と現行のRFエネルギーの安全ガイドライン。

EPAは、FCCに1999年のANSI/IEEEガイドライン[3]の全体よりも、1986年のNCRPガイドライン[5]を部分的に採用するように要請しました。FCCはこれを実行し[9]、EPAは正式にFCC安全ガイドラインを支持しています。

1999年4月30日付けのFCCへの手紙で、Robert Brenner(EPA放送・放射部門の副部門長代行)は、次のように述べています。

「FCCガイドラインは、RFエネルギーの熱効果を特に考慮に入れていますが、仮説の非熱効果は、例えば、長期曝露に起因するものは、直接には扱っていません。このことは事実でして、その大きな理由は、長期的な非熱の健康影響に関する科学的調査が不足しているからです。非熱の健康影響に関する情報の拠り所は、1993年と1996年に出されたEPAの最初のコメント以来、あまり変わっていません。非熱レベルでのRFエネルギーへの長期曝露が生物学的な因果関係を有すかもしれない、と報告している数件の研究があります。しかしながら、現在得られている大多数の研究では、非熱の健康影響の有意な危険要因はない、と示しています。したがって、次のことはEPAの見解であることに変わりありません。FCCの曝露ガイドラインは、科学的に確定している全ての危害(FCC認可事業者の発生するRFエネルギーの電磁界に起因するかもしれない危害)から公衆を適切に防護します」


15B)英・米・仏のTVでの、携帯電話がガンを生ずるかもしれないことを示す新データがある、という主張。

1999年の夏と秋に(さらに再放送が2000年と多分2001年に)、英・米・仏のTV番組は、携帯電話からのRFエネルギーが人に傷害を生ずることがある、と示す新データがあると主張しました。4件の「新しい」情報は大部分が次から引用されました。

  1. Hardell et al [69]による携帯電話の使用と脳ガンに関する疫学研究。この研究の詳しい議論については、Q16Eを参照して下さい。
  2. ボランティア被験者を携帯電話のRFエネルギーに曝露すると、反応時間が短くなるかもしれない、というPreece et tal [66]による1999年の報告。
  3. 新しい未発表の遺伝子毒性の研究。
  4. 新しい未発表の疫学研究。

これらの「新しい」研究のうち最後の2件は、TV報道ではあいまいに述べられただけですが、(WTRと呼ばれる計画で)米国の携帯電話産業界が助成した研究と関係があるようです。

WTRの疫学研究は、1999年6月の会議で発表され、現在、ピアレビューされた(同領域の他の専門家による論文審査を通り学術専門雑誌に公表された)文献[91, 127]で発表されています。発表された版では、悪性[91]または良性[127]の脳ガンと携帯電話の使用との間には有意な関係はないと報告しています。この研究の詳しい議論は、Q16Eを参照してください。

WTRの遺伝子毒性の研究は、1999年3月の会議で述べられました[71, 72]。このWTRの研究は部分的に、2002年初めに発表されました[121]。その発表の版[121]では、5または10W/kgのRFエネルギーによって、1つの特定タイプの遺伝子毒性傷害(小核形成の増加)を生じ得たが、DNA鎖破壊を拡大することはなかった、と報告しています。Vijayalaxmi et al [97]、Bisht et al [130]、McNamee et al [146, 147]およびKoyama et al [186]は、小核を見いだすのは再現できないと報告しています。WTR遺伝子毒性研究の著者たちは、自分たちの報告した小核形成の影響は加熱によるものかもしれないと推測しています。


15C)英国における専門家の学術委員会は、携帯電話の基地局の安全性についてどのように述べましたか?

2000年に、英国の特別委員会「携帯電話に関する独立専門家グループ」(IEGMP、「スチュアート委員会」としても知られる)は、携帯電話の安全性の問題に関する報告を発行しました[84]。全文は次のウェブサイトから得られます。 http://www.iegmp.org.uk/report/text.htm

追跡調査の報告は、2003年[187] 、2004年[200, 217]と2005年[229]に、英国放射線防護庁(NRPB)によって発行されました。2003年の報告[187] の全文は次のウェブサイトから得られます。 http://www.hpa.org.uk/radiation/publications/documents_of_nrpb/pdfs/doc_14_2.pdf
2004年の報告[200, 217]は次にあります。
http://www.hpa.org.uk/radiation/publications/documents_of_nrpb/pdfs/doc_15_3.pdf および http://www.hpa.org.uk/radiation/publications/documents_of_nrpb/pdfs/doc_15_5.pdf
また2005年の報告[229]は次にあります。
http://www.hpa.org.uk/radiation/publications/w_series_reports/2005/nrpb_w65.pdf

注:英国放射線防護庁(NRPB)は現在、英国健康保護局放射線防護部です。


RFエネルギーの安全性の一般的な問題に関して、2000年に専門家グループは次のように結論しました[84]。

「これまでの証拠の重要性の比較検討(balance of evidence)から、NRPBやICNIRP [4]のガイドラインより低いRFエネルギーへの曝露は一般住民に対し健康上の悪影響を与えない、と示されます。... 」

2003年に英国非電離放射線諮問グループ[187] は次のように結論しました。

「全体として、[ 2000年の] IEGMP報告以降に発表された研究は、懸念すべき原因にはなっていません。現在得られている証拠の重要性(weight of evidence)から判断すると、ガイドラインのレベルより低いRF電磁界に曝露しても健康上悪影響がある、とは示されません。しかし、RF曝露と健康に関して発表された研究には限界があり、携帯電話は比較的短期間に広範囲に使われはじめたばかりです。したがって、ガイドラインのレベルよりも低いRF電磁界への曝露で健康影響がある可能性については、まだ未解決のまま残っています。 それゆえに、継続した研究が必要です」

2004年にNRPB [217]は次のように報告しました。

「携帯電話の使用が世界中で広範囲に進展しているのに伴って、関連性がありはっきりと確証された健康への悪影響の増加が付随しているわけではありません。英国内では、使用している携帯電話システムが健康に悪影響を与えていると示す確固とした情報はありません。 このきわめて重要な点を強調することは重要です」

携帯電話の基地局に関して、2000年の専門家グループは次のように結論しました[84]。

「証拠の重要性の比較検討(balance of evidence)から、曝露はガイドラインの何分の一かの微小値であるよう要求されているので、基地局付近に住んでいる人々の健康に対して全般的なリスクはない、と示されます」

2003年に英国非電離放射線諮問グループ[187] は次のように結論しました。

「携帯電話の基地局付近に住んでいるときに受ける曝露レベルは極めて低く、全体的な証拠からそのレベルでは健康リスクを引き起こしそうにないことが示されます」

2004年にNRPB [217]は次のように報告しました。

「[英国通信庁(Office of Communications)]の測定値によれば、マクロセル基地局(広範囲カバーの基地局)から受ける公衆の曝露は曝露ガイドラインの何分の1というような小さい値を示しています。... NRPBも約60ヵ所の基地局サイトの調査から曝露レベルについて類似した結論に達しています。ピコセル(建物内の小範囲カバー)近隣の曝露が、公衆のためのガイドラインの2、3パーセントしかないことがわかっています」

RFエネルギーとガンに関して、英国非電離放射線諮問グループ[187] は次のように結論しました。

「生物学的証拠から、RF電磁界は突然変異を生成せず腫瘍形成の開始や促進もしない、と示されます。さらに、疫学的データからは全体的にみて、RF電磁界への曝露(特に携帯電話の使用によるもの)とガンのリスクとの因果関係は示されません」

2005年のNRPBからの報告[229]は、他の国や科学者グループの行った26件の論評についての論評で、次のように結論しています。

「ここで調べた26件の報告のほとんどは類似した結論に達しています。... 全体として報告は、低レベルのRF電磁界への曝露によって微妙なさまざまな生体影響を生じるかもしれないと認めています。… しかし曝露が健康に悪影響を引き起こす可能性は証明されないままです。... さらにこれらの報告は非常に低いレベルの曝露(代表例は基地局)によって生物物理学的原因の影響が生じるのは極めて起こりそうにないと強調していますが、局所的な曝露(代表例は携帯電話からの曝露)は近い頭部表面の生体組織を緩やかに加熱する結果として影響を誘発するかもしれません」


15D)カナダにおける専門家の学術委員会は、携帯電話の基地局の安全性についてどのように述べましたか?

Royal Society of Canada(カナダ学士院)が招集した専門家委員会は、携帯電話の安全性に関する報告を1999年に発行しました[68]。その報告およびその報告の2004年改訂版のウェブサイトは、
http://www.rsc.ca/index.php?page=expert_panels_rf&lang_id=1&page_id=120

携帯電話の基地局に関して、専門家委員会の結論は:

「カナダで稼動中の基地局の付近で実施した実態調査によれば、公衆は周囲からの極めて弱いRF電磁界に曝露されていることが示されます。これらの曝露は、Safety Code 6(安全規約6)で勧告されている最大曝露よりも典型例で数千倍低いです」


15E)米国における専門家の学術委員会は、携帯電話の基地局の安全性についてどのように述べましたか?

2001年に米国電気電子学会(IEEE)は携帯電話の基地局に関する声明を発表しました[22]。報告のウェブサイトは、 http://ewh.ieee.org/soc/embs/comar/base.htm

声明の結論は:

「ほとんど全ての周囲状況において、無線基地局付近のRF電磁界への公衆曝露は勧告された安全性の制限値よりもかなり低いです。... したがって、無線基地局が老人、妊婦、子供たちを含む一般住民にリスクを与えるとは考えられません」

2002年5月にオンライン化されたウェブサイト(http://www.fda.gov/cellphones/)で、米国食品医薬品局(FDA)と連邦通信委員会(FCC)は次のように述べています。

「基地局アンテナの施設から送信された電磁RF信号波は、比較的狭い空間を地平線に向かって伝わります。... したがって、地上でのRF曝露は、アンテナの直ぐ近くでの曝露ならびに無線信号波の伝わる空間内での曝露に比べて、はるかに小さいです。実際には、そのようなアンテナによる地上レベルの曝露は、専門家団体が安全であると勧告した曝露レベルよりも典型例で数千倍低いです。したがって、近隣住民に対する曝露は、安全許容範囲内に十分入るでしょう」

「タワー上に設置した携帯電話やPCSの基地局アンテナの付近で実施した測定によって、地上レベルの曝露はFCCの採用した曝露制限値よりも典型例で数千倍低いことが確認されています。実際には、携帯電話やPCSの周波数に対するFCCの制限値あるいはそれに近いレベルに曝露するためには、人は無線送信の主信号波のところで(アンテナの高さのところで)かつアンテナから2、3フィート以内のところに本質的に留まっていなければならないでしょう。...」

「携帯電話やPCSのアンテナが屋上に設置されている場合、その屋上または近くの他の場所でのRFレベルは地上で一般に見られる値よりも恐らく大きいでしょう。しかしながら、安全ガイドラインに近いかまたはそれを超える曝露レベルは、アンテナの間近または直前でのみ見られる筈です。...」


15F)オランダにおける専門家の学術委員会は、携帯電話の基地局の安全性についてどのように述べましたか?


2002年にオランダ保健評議会は、携帯電話の安全性に関する報告を発行しました[124]。報告のウェブサイトは、http://www.gr.nl/pdf.php?ID=377

携帯電話端末機(ハンドセット)の安全性の一般的問題に関して、保健評議会の結論は:

「現状での科学知識によれば、携帯電話の電磁界は健康の危険要因にはなりません」

携帯電話の基地局に関して、保健評議会は彼らの以前(2000年)の次の結論[125]を再確認しました。

「アンテナから発生する電磁界への曝露の結果として、基地局の下で生活し働いている人々に起こる健康問題の可能性は、委員会の見解によれば無視できるほどです。電磁界レベルは曝露制限値よりもいつもかなり低いです」


15G)フランスにおける専門家の学術委員会は、携帯電話の基地局の安全性についてどのように述べましたか?

2001年にDirecteur Général de la Santé(保健総局)は、携帯電話とその基地局の安全性に関する報告(Les Téléphones Mobiles, leurs Stations de Base et la Santé)を発行しました[118]。

携帯電話端末機(ハンドセット)の安全性の一般的問題に関して、フランスの報告の結論は:

「運転中の携帯電話使用に関係する事故・死亡のリスクは、明確に立証されています。現状の知識では、これは唯一の判明した健康リスクです。非常に深刻なリスクですが。」

携帯電話の基地局に関して、報告の結論は:

「人への曝露は、携帯電話で呼び出しているときよりも、立ち入り禁止区域を除いた基地局付近の方が、かなり小さいです。... 実測した曝露レベルを考慮して、専門家グループは、基地局付近に住んでいる住民に対して健康リスクがあるという仮説を支持しておりません」


15H)オーストラリアにおける専門家の学術委員会は、携帯電話の基地局の安全性についてどのように述べましたか?

2002年のRFエネルギー防護基準の追加資料[168]において、オーストラリア放射線防護・原子力安全庁(ARPANSA:Austrarian Radiation Protection and Nuclear Safety Agency)は、携帯電話の基地局の安全性を次のように議論しました。

「携帯電話のタワーからの無線周波放射(RFR)は、他の通信の放射源から大部分が生ずる周囲環境全体のRFRのうち、僅かな部分にしか過ぎません。場所に依存しますが、携帯電話のタワーからのRFRは、他の送信源(AMやFMのラジオ、テレビジョン、ページング・システム、救急サービスを含む)からの放射を合わせた全RFRの3%よりも一般に小さいです。
さらに携帯電話のタワーに近いところで測定したとき、全て合わせた無線周波放射源からの曝露レベルは、2μW/cu [0.002mW/cu]よりかなり小さいのが普通です。そのようなRFRレベルは最大許容可能な公衆曝露レベルの1%よりも小さいです」

その文書の他の場所でARPANSAは、RFエネルギに対する公衆曝露の安全基準を次のように議論しました。

「安全性の重要要因は、曝露制限値の中に組み込まれています。-- 即ち、その制限値は、健康上悪影響が起こるとわかっているレベルよりも十分小さい値に設定されています。現在のデータでは、ARPANSAの制限値よりも小さい曝露レベルで健康上悪影響があるということは確証されていません」

[携帯電話の基地局からのRFエネルギーへの公衆曝露に関して、オーストラリアの基準がICNIRPガイドラインと(完全に、とまではいかないが)大部分は一致しているのは、注意すべきです]


15I)デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデンにおける専門家グループは、携帯電話の基地局の安全性についてどのように述べましたか?

2004年に、デンマーク保健庁、フィンランド放射線・原子力安全機関、アイスランド放射線防護機関、ノルウェー放射線防護機関、スウェーデン放射線防護機関は、「携帯電話通信と健康」[209]に関する共同声明を出しました。
声明のウェブサイトは、 http://www.ssi.se/ickejoniserande_stralning/mobiltele/NordicMobilPress2004.pdf

「北欧の当局(5ヵ国)は、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)の勧告した基本制限や参考値よりも低いところでは、携帯電話通信システムから(基地局からも送受話器からも)受ける健康上の悪影響について、科学的証拠がないことに合意しています。しかしまだ知識が不足している部分があり、その分野の研究をもっと進めることは必要です。ICNIRPガイドラインよりも低い曝露レベルで 生体影響が起こるかもしれないと示唆する報告は多く発表されています。 これらの研究は再現する必要があり、その分野の研究の科学的推移を注意深く追跡すべきです。 しかしこの文脈では、生体影響が必ずしも健康の危険要因を暗示するわけではないことに留意するのは重要です」

「基地局による一般公衆の曝露は極めて低く、ICNIRPガイドラインよりも通常100〜1000倍も低く、さらに送受話器による曝露よりもずっと低いです」

「大人よりも子供や若者たちの方が、携帯電話通信からの電磁界に対してもっと過敏であるかどうかは不確実であり、この主題に関する直接の研究はほとんど実行されていません。 オランダ保健評議会が最近編集したものによると、子供が大人より無線周波放射に敏感であるという証拠はないこと、子供に対して特別な制限は必要でないこと、これらの結論を下しています」


16)基地局からのRFエネルギーへの曝露が安全であると示す疫学研究はありますか?

はい、いいえ、のどちらとも言えません。
ガンと携帯電話の基地局との疫学研究はありませんが、ガンと他の種類のRFエネルギー曝露との疫学研究はあります。概要については、次を参照して下さい。

基地局からのRFエネルギーに関する疫学研究は「個々の曝露を十分正確に推算できないので、実行不可能」であるというのが、一般的な結論です[138]。

一般に、RFエネルギーとガンの疫学研究では、曝露とガンの有意な相関関係は見いだされていません。その研究には次のことが含まれています。


16A)地理的相関関係の研究

地理的相関関係の研究は、地理的区域のRFエネルギー強度を推算し、その推定値を該当区域内の疾病比率と相関させるものです。たとえ地理的相関関係の研究企画が最適なときであっても、それらは予備的なものとみなされ、因果関係を決定するのにふつうは使われません。

今までになされた地理的相関関係の研究から、成人または小児のいずれのガンもRFエネルギーへの曝露との間の一貫性のある関係は無い、と示されています。地理的相関関係の初期の研究 の詳細な議論については、Elwood [63]を参照して下さい。最もよく知られている地理的相関関係の研究は、TVやラジオの放送塔付近に住んでいる人々のガンに関する研究です。


16B)ガンの群発の研究

「ガンの群発」の報告を評価するときの主な段階は、次の通りです。

  1. 空間と時間の論理的(任意的と反対の意味で)な境界を明確に定め、
  2. ある特定の種類のガンが実際に過剰に発生しているかどうかを判定し、
  3. 共通する曝露や特徴を識別する。

上記段階はRFエネルギーの研究ではあまり守られておらず、また「ガンの群発」に関する報告は、RFエネルギーへの曝露がガンの原因であるかどうかを判定するのに、本質的には何も役立っていません(これらの研究の詳細については、Elwood [63]を参照)。


16C)職業上の曝露の研究

RFエネルギーへの職業上の曝露に関する5件の疫学研究があります。それらの研究は大部分が、受容できる企画と分析、適切な標本サイズ、および十分な追跡調査時間を備えているとみなされています。Robinette et al [52]、Hill [53]、Milham [54]、Morgan et al [78]、Groves et al [126]の5件の研究では、ガン一般または特定の種類のガンのいずれもRFエネルギーへの曝露との間の一貫性のある関係は示されていません。

その他の研究で受容できる企画のもの(Lilienfeld et al [55およびQ16D]、Lagorio et al [56]、Muhm [57]、Tynes et al [58]、Grayson et al [27]、およびThomas et al [74])は、曝露評価、症例確認、または追跡調査時間において、より多くの制約があります。しかしそれらの研究でも、RFエネルギー曝露によってガン一般や特定の種類のガンのリスクが増加するのは示されていません。

最近の主要な職業上のRFエネルギー曝露に関する研究には、以下が含まれます。

2000年:Morganと同僚[78]は、モトローラ(無線通信機器メーカー)の従業員の主な死亡原因を全て(脳ガン、リンパ腫、白血病に重点をおいて)調査しました。作業名に基づいて、労働者を高・普通・低・バックグラウンドの4つのRF曝露グループに分類しました。普通または高RFエネルギー曝露の労働者では、脳ガン、白血病、リンパ腫等の割合の上昇は見られませんでした。実際のピークや平均のRFエネルギー曝露レベルはわかりません。

2002年:Grovesと同僚[126]は、朝鮮戦争中の米国海軍レーダーによるRFエネルギーへの曝露とその後のガン比率の上昇とは関係がないと報告しました。同じ時に任務に就いていたが「低いレーダー曝露の可能性」のあった海軍軍人と比較すると、「高いレーダー曝露の可能性」のあった海兵では全体的なガンおよび脳ガンが予想よりも少ないことがわかりました。非リンパ球性白血病の比率は上昇しましたが、しかしこの上昇は3つの高い曝露の職業のうち1つだけが統計的に有意であったと著者は特筆しています。これはRobinette et al [52]に対する追跡研究です。


16D)マイクロ波とモスクワの米国大使館

モスクワの米国大使館でのマイクロ波曝露によって、そこで働いている人々にガンや他の傷害を生じたという主張があります(例えば、Golssmith [24]によるもの)。このRFエネルギーへの曝露は起こりましたが、健康影響を生じたという実際の証拠はありません。

1953年から1976年まで、強度の低いマイクロ波がモスクワの米国大使館の建物に向けられていました。Lilienfeld et al [55]は、大使館勤務の任命のあった海外勤務の職員(およびその扶養家族)1827人の健康上体験したことに関し、広範囲にわたる実態調査を行ないました。彼らの健康上の体験は、他の東欧大使館に任命されていた海外勤務の職員(およびその扶養家族)2561人の健康上の体験と比較されました。モスクワの大使館で数ヵ所の異なる曝露領域を3回の期間に分けて測定することによって、最大曝露は18時間/日に対して0.015mW/cu(0.5〜9GHzで)とわかりました。曝露期間中のほとんどで、最大レベルはそれよりも小でした。比較母集団の大使館では、バックグラウンドレベルであったと伝えられました。

Lilienfeld et al [55]は、モスクワグループの人々が何かの原因で、即ち、ガン一般または何かサブタイプのガンによって、より高い死亡率に達した、という証拠を見いだしませんでした。この研究はよく企画されていたにも関わらず、比較的小さなコホートサイズや短時間の追跡調査のためにその研究能力は制限されました。この研究能力はまた極端に低いRFエネルギーレベルによって制限されています。ただし、このRFレベルはほとんどの携帯電話の基地局アンテナ付近で計測される値よりも大きいことに注意すべきですが。この研究の結論は:

「モスクワの米国大使館で働いている人々は、大使館事務局めがけて放射されたマイクロ波からは何も悪影響を受けませんでした」


16E)携帯電話のRFエネルギーへの曝露の研究

1996年:Rothman et al [79]は、250,000人より多い携帯電話使用者の健診記録を精査しました。携帯電話(アンテナは頭の近くに配置)と車載型携帯電話(アンテナは車体に設置)の使用者間で死亡率の差異は見られませんでした。1999年の追跡研究[80]で同グループは、米国都市数ヵ所での携帯電話使用者約300,000人について、死亡の特異原因を調べました。彼らは、全体的なガンの比率、白血病の比率、あるいは脳ガンの比率において、携帯電話の使用者と車載型携帯電話の使用者の間での差異を見いだしませんでした。携帯電話の使用と相関性のあった死亡の唯一の特異原因は、自動車の衝突による死亡でした。

1999年:Hardell et al [69]は、スウェーデンの脳腫瘍患者233人(そのうちのある人は、10年にも及ぶ間、携帯電話を使用していました)の携帯電話の使用を分析しました。これは、脳ガンの可能性のある原因に関する大規模調査の一部として行われました。アンケートによって曝露を評価しました。ディジタル式やアナログ式のいずれの電話使用者にも、脳腫瘍発生率の上昇は見られず(下図参照)、また、曝露−反応の傾向は観察されませんでした。携帯電話を使ったと報告のある同じ側の脳の側頭葉(即ち、側頭部、後頭部および側頭頭頂葉)の腫瘍に限定して分析すると、脳ガン発生率の有意でない上昇が見られました。この「利き手」の傾向は、アナログ式電話の使用で見られましたが、ディジタル式電話の使用では見られませんでした。

2000年:Muscat et al [91]は、米国の脳腫瘍患者(そのうちのある人は4年間も携帯電話を使用していました)について、症例対照研究を発表しました。曝露は、病院内でのインタビューに基づき評価しました。携帯電話の使用者において脳腫瘍発生率の上昇は見られず(下図参照)、また、曝露−反応の傾向は観察されませんでした。(携帯電話の使用者においてRFエネルギー曝露が最大となるべき場所の)側頭葉の腫瘍発生率は上昇しませんでした。自分の電話を使用すると患者から報告のあった頭部側に腫瘍がある、という有意でない傾向はありました。しかし側頭葉の腫瘍に限定して分析すると、電話を使用した側の頭部での腫瘍は予想よりも少ないでした。Muscat et al [91]が組織の病的変化のタイプによって腫瘍を分析したとき、神経膠腫(しんけいこうしゅ:脳腫瘍の最もありふれた致命的な形態。グリオーム)の増加はなく、神経上皮腫の増加がありました。この増加は統計的には有意ではありませんでした。続く研究で、Inskip et al [95]もまた、神経上皮腫瘍の発生率低下を見いだしました。

2001年:Inskip et al [95]は、米国の異なった場所にいる脳腫瘍患者(そのうちのある人は5年間も携帯電話を使用していました)について報告しました。携帯電話の使用者において、脳腫瘍の上昇は見られず、また曝露−反応の傾向も観察されませんでした(下図参照)。(携帯電話の使用者においてRFエネルギー曝露が最大となるべき場所の)側頭葉の腫瘍発生率は上昇しませんでした。自分の電話を使用すると患者から報告のあったところと反対側の頭部側に腫瘍のあるという、有意でない傾向はありました。Inskip et al [95]が組織の病的変化のタイプによって腫瘍を分析したとき、悪性または良性の脳腫瘍のどのタイプも有意な増加はありませんでした。

2001年:Johansen et al [101]は、デンマークの携帯電話の使用者(そのうちのある人は5年間も携帯電話を使用していました)で、全種類のガンに関する後向きコホートの研究を発表しました。携帯電話の使用者は、全体的リスクの極く少ないガン(喫煙とほとんど無関係のガンに大きく帰因するガン)と関係づけられました。携帯電話の使用者では、脳ガン、白血病、リンパ腫、眼のガンまたは黒色腫(または他の種類のガン)、これらのリスクの増加は見られず、また、白血病や脳ガンの発生率の曝露−反応の傾向は見られませんでした。携帯電話の使用者では、側頭葉腫瘍または後頭葉腫瘍の増加はありませんでした(下図参照)。

2001年:Stang et al [99]は、「少なくとも数時間/日、職場で無線機、携帯電話または類似装置」を使用するのはブドウ膜(眼球内)の黒色腫に関係する、と報告しました。眼球内黒色腫のある118人のうち6人(5.1%)は、仕事で携帯電話に「たぶん、または確実に」「かつて曝露したことがある」と述べました。著者によれば、この職業上の携帯電話の使用は、予想よりも4倍も多いそうです。仕事以外での携帯電話の使用は評価されず、また他のリスク要素(例えば、UV(紫外線)曝露や軽度の日焼け)も評価されませんでした。他の唯一の類似研究でJohansen et al [101]は、携帯電話の使用者では予想よりも黒色腫や眼球ガンが少ないことを見いだしました。

2002〜2003年:Hardellと同僚は、1617人の脳腫瘍の患者に関する研究に関して4つの別々の分析を発表しました[137, 148, 159, 160]。この調査がなぜ4つの違った構成で発表されたかについては、不明です。研究は、良性と悪性双方の脳腫瘍、また携帯電話とコードレス電話の両方を含んでいました。良性(ガン性でない)脳腫瘍は全体の55%を占め、使用電話での35%はコードレス電話であり、「携帯電話」ではありませんでした。

2002〜2003年のHardellの報告[137, 148, 159, 160]の有意性を評価するとき、次のように非常に難しいです。

  1. 実験の設計に関係する問題があります(スウェーデン放射線防護機関の委託した2002年の論評[143]を参照)。
  2. 同じ研究に対して4つの異なる分析があります。
  3. データは多くの異なる方法で分析されています。それは、電話機の形式(アナログ対ディジタル対コードレス)、使用周波数、使用時間数、使用年数、腫瘍の種類、腫瘍の位置、腫瘍の潜伏等によって小分けされています。4件の論文は合わせて500以上に分けられたサブグループの分析を含むことになり、しかもこのような多くの視点でデータを見ることになれば、観察された関連性が事実なのかまたは偶然なのかを見分けることは不可能です。
  4. 同じにサブグループとみられるものに対して、それぞれ異なる分析によって、症例者と対照者の人数ではそれぞれ異なる人数が報告されています(また、異なる相対リスクが計算されています)。例えば、 最初の分析の表2[137]と第3版の表U[159]を比較してみてください。
  5. 多くの下位の小分析では(特に第1版と第3版では)、悪性脳ガンと非悪性の病変が併合されています。そのため、悪性腫瘍の発生率が影響を受けているか否かを判定するのは不可能です。

悪性脳腫瘍を調べたHardellの研究の3つの版[137, 148, 159]はどれも、アナログ式またはディジタル式の携帯電話の使用者で悪性脳腫瘍の発生率は有意な上昇を示していないようです(下図参照)。実際に、いくつかの分析では悪性の側頭葉腫瘍の発生率は僅かに減少しました。2番目の分析[148]ではHardell et alは、脳ガンの発生率で統計的に有意な全体的上昇はないが、脳腫瘍の発生率は電話を使用した側の頭部で増加しその反対側で減少した、と報告しています。

良性脳腫瘍を調べたHardellと同僚の研究の3つの版[137, 148, 160]は、聴神経腫の発生率がアナログ式電話の使用者で上昇したことを示しているようです。しかし多重比較で修正後もその上昇が統計的に有意であるかどうかは不明です。ディジタル式電話の使用では上昇は見られませんでした。その後の聴神経腫の研究3件のうち2件(Muscut et al [127], Christensen et al [192])では上昇が見られず、1件 (Lönn et al [210])はアナログ式電話の長期使用でたぶん有意かもしれない上昇があると報告しました。「聴神経腫」(acoustic neuroma)[127, 210]、「聴神経鞘腫」(acoustic neurinoma)[159]、「前庭神経線維腫」(vestibular schwannoma)[160]が同じ種類の良性腫瘍に対する異なった名前であるのは注意すべきです。

Hardellと同僚の行った研究[69, 137, 159, 160]は、スウェーデン放射線防護機関の委託した2002年の論評[143]でかなり厳しく批判されました。その論評の結論は:

「生存患者だけをインタビュー調査し500人を超える患者が除外されたために、また選択バイアス(偏り)と情報バイアス等の形跡があるために、生存ガン患者に関するこの調査から因果関係の推論に対する根拠を得ることはできません。スウェーデンではコードレス電話はアナログ式[携帯]電話の100分の1以下の電力レベルで使われており、コードレス電話に関する健康リスクは報告バイアスがあることを示しています。 同じ側の電話使用に対する増加は、反対側の電話使用に対する減少で相殺されています。これは報告バイアスを暗示しています。... 曝露量−反応の証拠はありませんでした。... 上記に列挙した不十分な点および実施した多くの比較(200件以上)があるために、報告された関連性を最もありそうに説明するのは、バイアスと偶然性です」

2002年にMuscat et al [127]は、携帯電話の使用と聴神経腫(良性脳腫瘍)のリスクの増加とは関係づけられないと報告しました。この研究は、悪性脳腫瘍と携帯電話の使用に関するMuscatの以前の報告[92]と類似しています。携帯電話の使用者に見られた腫瘍は、電話機を使用したと報告のあった側よりも、電話機を使用した所と反対側の方にありそうに思われました。

2002年にAuvinen et al [132]は、携帯電話の使用と脳ガンの全体的発生率または唾液腺ガンの発生率との間には統計的に有意な関係はない、と報告しました。脳ガンをタイプ別にサブ分類したとき、神経膠腫(グリオーム)とアナログ式電話の使用では弱い関係が見られました。 ディジタル式電話では、有意な関係はありませんでした(下図参照)。

2004年にChristensen et al [192]は、携帯電話の使用はデンマークにおける聴神経腫(良性脳腫瘍)のリスクの増加と関係がないと報告しました。これらの結果は2002年のMuscat et al の研究[127]の結果と類似していますが、ただし、デンマークの研究の方がわずかに規模が大きく、携帯電話使用年数で5年を超える人々がより多く含まれています。

2004年: Hardell et al [208]]は、スウェーデンの携帯電話やコードレス電話の使用が唾液腺腫瘍のリスク増と関係がない、と報告しました。

2004年: Lönn et al [210] は、アナログ式電話の長期の(10年を超える)使用が聴神経腫(良性の神経腫瘍)の発生率の上昇と関係がある、と報告しました。その上昇は統計的には有意ではありませんでしたが、長期使用者で発生した聴神経腫はアナログ式電話を使用していると報告のあった側の頭部で不均衡に発生しました。 10年より短い期間でのディジタル式電話の使用者またはアナログ式電話の使用者では、聴神経腫の発生率の上昇は見られませんでした。使用者から電話を使用したと報告のあった側の頭部で神経腫の発生率がより高いというのは、思い出しバイアスの1例かもしれません。 即ち、頭部の片側に腫瘍のある使用者が頭部のその側で電話を使用しているのを思い出すのは、(対照者よりも)容易なことかも知れません。そのような「思い出しバイアス」は神経膠腫と髄膜腫を調べた研究の一部で明らかです[下記および227を参照]。

2005年: Lönn et al [227]の報告によれば、携帯電話(アナログ式またはデジタル式)の使用で、通常の使用、長期の使用(10年超)、長時間使用(500時間超)はいずれも、悪性脳腫瘍の発生率の上昇とは関係ありませんでした。実際に、これらの腫瘍の発生率は予想より僅かに少ないでした(下図参照)。 RFエネルギーへの曝露が最大になる脳の部分における腫瘍発生率も、携帯電話の長期使用者での予想より僅かに少いでした(下図参照)。神経膠腫と髄膜腫の両発生率は、被験者が携帯電話を使うと報告した側の頭部で上昇しましたが、反対側の頭部ではそれに釣り合うように減少しました。電話を使用したと報告のあった側の頭部での上昇は「思い出しバイアス」であると、著者たちは主張しています。
著者たちは次にように論じています。

「同側での携帯電話の使用年数と関係する神経膠腫と髄膜腫のオッズ比の僅かな上昇は、側頭葉または頭頂葉に限定される同側の携帯電話使用の分析から、確証されませんでした。携帯電話使用による無線周波曝露と脳腫瘍との因果関係があれば、携帯電話による曝露が最大の側頭葉または頭頂葉に限定した分析において、最大のオッズ比が予想されたことでしょう。 このことから示されるのは、反対側の携帯電話使用に対するオッズ比減少の結果と合わせて、思い出しバイアスがこれらの結果に影響したかもしれないということです。携帯電話使用の無線周波曝露によって、電話を通常保持する側の頭部で脳腫瘍リスクが増え、反対側の頭部で脳腫瘍が防護されるだろうというのは、生物学的にもっともらしくありません」

携帯電話使用者の悪性脳ガン

Hardell et al [69, 137, 148]、Muscat et al [91]、Inskip et al [95]、Johansen et al [101]、Auvinen et al [132]、およびLönn et al [227]の疫学研究から得た、携帯電話の使用者における悪性脳ガンの相対リスク(95%信頼区間で)。全体的分析および部分的分析において、曝露された症例者数を( )内に示します。図の上部の組(Least restrictive definition)は各研究グループで報告のあった「携帯電話使用」の定義が最も限定されていないものを示し、中央の組(Longest use or latency)は各研究グループで分析した最長の使用期間(または最長の潜伏期間)のものを示し、下部の組(Temporal lobe cancers)はRFエネルギーへの曝露が最大とみなされる脳葉での腫瘍のあるものを示します。Moulder et al (Int J Rad Biol 81:189-203, 2005)から改作。

(訳注) Relative Risk Estimates for Malignant Brain Cancer: 悪性脳ガンに関する相対リスクの評価、temporal lobe cancer: 側頭葉のガン、No effect:影響なし、Less (More) cancer than expected:予想より少ない(多い)ガン。


16F)疫学の論評

2002年の携帯電話の疫学に関する論評で、Boice and McLaughlin [143]は、次のように結論しました。

「我々の考えでは、これらの研究から一貫性のある見方が出てきていて、これまでのところ、かなりの確実さで携帯電話とガンの因果関係はあり得ないようです。曝露計測について広範囲に試験を行い、脳ガン、髄膜種、聴神経腫、眼の黒色腫、または唾液腺ガンのリスク上昇に対して、一貫性のある証拠は観察されませんでした。... 人に関するデータを補充することにより実験研究の結果が次第に明らかになり、RF[エネルギー]曝露によって起こり得る反対の結果に関する以前の報告は立証できませんでした。さらに非電離RF波による発ガン性への影響を裏付ける生物学的にもっともらしいメカニズムはありません」

2003年の疫学文献に関する論評で、Elwood [185e]は、次のように結論しました。

「無線周波(RF)曝露と人のガンに関する疫学研究には、軍および民間の職業グループ、テレビやラジオの送信機の近くに住む人々、携帯電話の使用者等が含まれます。白血病と脳腫瘍に特別の注意を払って、多くの種類のガンを評価しました。疫学の結果は、RFエネルギーが人のガンの原因であるとの結論に至るのに必要な、強力で一貫性のある証拠に達しません。疫学の証拠全体がガンのリスク増を暗示していないにもかかわらず、その結果は原因と影響について明確に説明することができません。結果は矛盾していて、ほとんどの研究は、実際の曝露についての詳細事項の不足、短い追跡調査期間、他の関連諸要因の処理能力の限界等によって制限されます。いくつかの研究では、使用データにおいて本質的なバイアス(偏り)があるかもしれません。これらの同じ理由から、研究がガンのリスク増の可能性を確信して排除することができません」

2003年の疫学文献に関する論評で、Breckenkamp et al [194]は、次のように結論しました。

「大部分の調査では、さまざまな種類のガンに対するリスクの増加は、違った器官ですが、曝露調査の参加者中に見られました。しかし、全体的な結果は矛盾していました。研究での最も重要な限界としては、過去と現在の曝露に関する測定がないこととそのため実際の曝露についての詳細が不明であること、潜在的交絡変数の調整が不足していることはもちろんバイアス(偏り)の可能性のあるデータを使用していること、さらに間接的な標準化方法を使用していることがあげられます。これらの限界と結果の矛盾があるために、それらの研究からは [ RFエネルギーまたはマイクロ波] がガンを引き起こすという証拠は得られないと結論しなければなりません」

2003年の疫学文献に関する論評で、スウェーデン放射線防護機関の編成した独立専門家グループ[195]は、次のように結論しました。

「携帯電話の使用とガンリスクについては、少数の疫学研究しか得られていません。全体として、大多数の研究ではリスクの増加を示す徴候は見られていませんが、いくつかの肯定的結果が2件の研究で報告されています。 しかし、これらの僅かな肯定的結果を説明できる範囲を制限しているものとして、研究方法上の考慮すべき事柄があります。影響がないと報告している研究でも限界は明らかであり、それは主に追跡調査が短期間であるためです。したがって、携帯電話からのRF曝露によって生じるガンリスクに関して、現在の証拠は確定的ではありません」
ウェブサイトは: http://www.ssi.se/english/EMF_exp_Eng_2003.pdf

2004年の疫学文献の論評において、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)の疫学常任委員会[219]は、次のように結論づけました:

「我々は、無線周波(RF)電磁界の健康への影響の疫学研究に関して、包括的な論評を引き受けてきました。... これまでのこれらの研究結果からは、RFエネルギーと健康への悪影響の因果関係の一貫したあるいは説得力のある証拠は得られていません。他方、それらの研究には多くの欠陥があり過ぎるために、関連性を排除することができません。全ての研究についての重大な問題は、RF曝露評価の品質です。RFを使う新技術が至る所に存在するにもかかわらず、RF発生源による住民の曝露についてはほとんど分からず、また相対的に重要となる別の発生源についてはなおさら分かりません。他の注意事項は、これまでの携帯電話の研究が扱うことができたのはかなり短い期間だけであること、小児曝露の結果に関してはデータがほとんど得られていないこと、また発表されたデータは主に少数の結果、特に脳腫瘍や白血病に集中していることです」

関連問題として[145, 149]、2002年9月に米国連邦裁判官は、携帯電話−脳ガンの主要訴訟の1件で原告が「一般的または特定の因果関係を裏付けるのに十分な信頼性・関連性のある科学的証拠を何も」提出しなかった、と判決を下しました。この判決により、携帯電話が脳ガンの原因であると主張する米国訴訟のほとんど(もしくは全て)は却下されることになるかもしれません。原告は、Hardell et al [69, 137, 148]による疫学研究ならびにLai and Singh [25, 26]による実験室での研究を非常に頼りにしていました。実際の判決を掲載しているウェブサイトは、http://www.mdd.uscourts.gov/Opinions152/Opinions/newman0902.pdf です。2003年10月に、この判決は控訴審裁判所によって是認されました[145]。


17)携帯電話の通信で使われるパルス変調のRFエネルギーは、多くの実験室での研究で使用される連続波(CW)のRFエネルギーとは異なる影響を及ぼすことがありますか?

たぶん、そうかもしれません。しかしそのような影響についての確認された証拠はありません。振幅変調(AM)やパルス変調のRFエネルギーは、連続波(CW、未変調)のRFエネルギーとは異なる影響を及ぼすかもしれないと示唆されています(例えば、Hyland [93]およびd'Ambrosio et al [119] を参照)。そうであれば重大なことでしょう。というのは、携帯電話とその基地局は変調信号波を発生していて、研究の大部分は未変調のRF発生源で行われているからです。

2003年に、米国放射線防護測定審議会(NCRP)は、振幅変調の問題に関する報告[201]を発行し、次のように結論しました。

「RFエネルギー変調−依存の影響に関する文献は、全体の科学文献のうちわずかな部分です。これは、変調機能として電磁界の生体影響を試験する企画で、動物実験の研究が比較的少ないことによります。... 結果は入り交じっていますが、生体影響を生ずるのに有効なものとして、平均入射電力密度が同じであれば、いくつかの状況下ではパルスRFエネルギーの方が連続波エネルギーよりももっと有効であり得る、と結果は示しています。... 現在の制限値の許す曝露条件のもとで存在するかもしれないという危険要因は、これらの研究から示唆されません」

「本解説書の結論は、RFエネルギーの生体影響の変調−依存性に関する科学文献では、RF電磁界の変調−依存で起こるかもしれない健康上の危険要因について、結論を出すのに十分でなく、さらに、ある特殊の軍事設備によって生ずる非常に強烈なRFパルスへの曝露は別として、そのような危険要因を予知するための明白な生物物理学的根拠もない、ということです」

2004年の論評で、Foster and Repacholi [206]は、変調を「通信システムや他の技術によって放出されるRFエネルギーのリスク評価において、潜在的に生物学的に意味のある重大な一要因として」考慮すべきかどうかの問題を論評しました。彼らは次のように結論しました。

「変調は、ある周波数帯(信号波)を搬送波の波形の中に導入しますが、ほとんど全ての場合、この周波数帯は搬送波の周波数と比べて低いです。従って、変調に関係する非熱の(電磁界−依存の)生体影響はいずれも、無線周波に反応する十分速い相互作用のメカニズムによって生じなければなりません。かなりの推論であるにもかかわらず、そのようなメカニズムは立証されていません」

「RFエネルギーのさまざまな変調−依存の生体影響が報告されていますが、一方では、そのような影響は独立した別の機関によってほとんど確認されていません。いくつかの広く議論されている影響(例えば、報告されている、脳組織からのカルシウム流出に及ぼすRF電磁界の変調−依存の影響)は、生物学的に意味のある重大性が立証されずに、論争の的になっています。そのような影響を生じるメカニズムに関する知識が不足しているために、複雑な変調特性のある通信信号に対してメカニズムの意義を評価するのが妨げられています。将来の研究は、報告された変調に関係する生体影響について、確認することとメカニズムを理解することの方向に向けられるべきです」

「変調は、通信-型式の信号の含まれるリスク研究を企画する際に、考慮すべきですが、それによって、良好な研究企画という他の側面(例えば、適切な統計検定力を維持することや曝露量-反応関係を確認すること)がおろそかになってはいけません」


18)RFエネルギーの影響に対し、比較的敏感なグループ(例えば、子供や大人)は存在しますか?

たぶん、そうかもしれません。一般住民のあるグループが他のグループよりRFエネルギーの影響に敏感ということがあるかもしれませんが、そのようなグループは実際には見いだされていません。そのように敏感な個人が存在するかもしれないということは主要な理由の一つであり、この理由から公衆曝露のガイドラインにさらに5倍の安全許容範囲が付加されています(Q9 参照) 。


19)携帯電話の基地局アンテナが、心臓のペースメーカーに影響したり、頭痛を生じたり、等々の原因になるでしょうか?

携帯電話の基地局アンテナに対する、公衆の健康上の主要関心事は、ガン関連の可能性のようにみえますが(Q21およびQ23A−Q23Cを参照)、他の健康関連の問題もときどき出てきます。この項では、あまり一般的でない問題も取り上げます。流産や先天的欠損症との関連の可能性は、Q22で扱います。


19A)携帯電話の基地局アンテナは、心臓ペースメーカーのような医療機器に影響を及ぼすでしょうか?

いいえ。曝露レベルが、管理されていない(公衆)曝露に関するIEEE/ICNIRP/FCCガイドライン内に保たれている限り、携帯電話の基地局アンテナが、心臓ペースメーカーや他の植込み型の医療機器と干渉するという証拠はありません(Q8およびQ12を参照)。

アンテナがペースメーカーのすぐ上にあれば、ディジタル式携帯電話自体がペースメーカーとたぶん干渉することはあり得ます。ある種類のディジタル式携帯電話とある種類のペースメーカーのときのみ、この問題が生ずると報告されています[34, 90]。

(訳注:日本では、携帯電話と心臓ペースメーカーとの間隔を22cm以上(強い場合、30cm以上)離すこと、という安全ガイドラインがあります)


19B)携帯電話や携帯電話の基地局によって頭痛が生じますか?

基地局が頭痛を引き起こすという科学的証拠があるとは誰も主張しておりません。またそのような影響を予想する生物物理学的または生理学的根拠は存在しません。しかし携帯電話端末機(ハンドセット)の使用によって頭痛が生じることはあり得ます。

1998年に、Frey [36]が携帯電話は頭痛を生ずるという事例証拠を報告しました。

2000年に、Oftedal et al [100]が見いだしたことですが、携帯電話の使用者は一般的に頭痛がすると述べています。しかしその研究には非使用者のデータが含まれていませんので、携帯電話の使用者の述べた頭痛の割合が異常であるかどうかはわかりません。Sandström et al [106]の行った拡張した研究では、頭痛や他の自覚症状の割合はディジタル式(GSM)電話の使用者よりもアナログ式(NMT900)電話の使用者の方が高いと報告されました。

2000年にChia et al [94]は、携帯電話の使用者は、非使用者に比べて、頭痛が著しく広がっている(65% 対 54%)と報告しました。頭痛を感じる人々の割合は使用期間とともに上昇しましたが、ハンドフリー装置を使用した場合にはその上昇は無くなりました。


19C)携帯電話や携帯電話の基地局からのRFエネルギーは、生理や行動の変化を生じますか?

再現されていませんが、そのような影響に関する報告はあります。いくつかの研究では、携帯電話や携帯電話の基地局からのRFエネルギーが、微妙な生化学的、生理的、行動的な変化を生ずるかもしれないと示唆しています。しかしながら、どの研究も、携帯電話の基地局が健康の危険要因となるかもしれないという本質的な証拠を示していません。

最近(2003年以後)の報告で、そのような影響に関するものを以下に掲げます(ただし、"What's New"(最新情報)も参照)。



20)RFエネルギーは生体に影響を及ぼすことがありますか?

はい。曝露の強度が十分に大きいときには、RFエネルギーは生体に影響を及ぼすことがあります(論評については、Dewhirst et al [173]を参照)。可能性のある損傷としては、白内障、皮膚のやけど、深いやけど、熱ばて、熱射病などがあります。高出力のRF発生源への曝露による、既知の生体影響は、全てではないにしても、そのほとんどは加熱(heating)によるものです[16]。この加熱の影響は、行動の変化から目の損傷(白内障)まで多岐にわたります[詳細は、3, 4, 5, 41, 61, 62, 68, 170, 173, 185c, 185d, 185h, 185i を参照]。アンテナの放射表面からたぶん数メートル以内は別にして、携帯電話の基地局から出る電力は加熱を生じさせるには低過ぎます。

加熱によらないような影響、いわゆる非熱効果[16, 20, 104]に関する報告は、ときどき出てきます[17]。それらの影響はいずれも独立した別の機関によって再現されておらず、それらのほとんどは人の健康リスクと明白な関係はありません[185a]。

生体に重大な温度変化を生じないRFエネルギーに曝露しても、生体への影響がないというのは、驚くべきことではありません。というのは、そのような影響がありそうなことを示唆する、解明された生物物理学的メカニズムがないからです[20, 82, 104, 109, 154, 158a]。

2001年の論評でのPickard and Moros [104]の結論は:

「超高周波(UHF)(300〜3000MHz)の照射が非熱の生体影響を生ずる見込みが小さいことを、理論的に検討し明らかにしています。...  このことから、時間・空間にわたってエネルギーを蓄積しそれを集中するメカニズムが明らかにされない限り、UHF周波数での生体影響は起こりそうもない、という以前の議論が裏付けられます。考えられる3つのメカニズムは起こりそうもないことを、検討し示しています。...  最後に、典型的な電磁界から集まって典型的な生体組織内部に貯まるエネルギー堆積率は非常に小さいので、有意な非熱の生体影響は生じそうもない、と結論づけられます」

2003年の論評でのAdair [154] の結論は:

「連続的な無線周波(RF)やマイクロ波の放射が10mW/cuより低い強度で、非熱メカニズムによって生理機能に重大な影響を及ぼすことはなさそうです。生体組織は、基本的にノイズであって、分子的尺度では熱攪拌によるノイズ、巨視的には生理機能や動物行動によるノイズです。もしも電磁界が生理機能に重大な影響を及ぼすのであれば、身体に直接及ぼす影響は体内の至るところに存在するノイズに起因する影響よりも大きくなければなりません。この判断基準を用いて私は、一連の弱い電磁界の相互作用はどれも ... 分子的尺度で生体に影響することはあり得ないことを示します。さらに私の結論として、細胞のような比較的大きな生体要素との相互作用で、そのような弱い電磁界が重大な影響を生ずるのは全くなさそうです」


21)RFエネルギーがガンを生ずることがあるという再現された証拠はありますか?

いいえ。高レベルの曝露でさえも、RFエネルギーがガンの原因または一因となり得ることを示す確定的な証拠はありません(論評については、Dewhirst et al [172]を参照)。この分野の研究は広範囲になされていますが、携帯電話の基地局アンテナからのRFエネルギーへの公衆曝露に関係する電力レベルで、RFエネルギーがガンに関係するという再現された、実験室での証拠または疫学的証拠はありません[詳細は、Q16C, Q16E, Q16F, Q23B および参考文献64, 68, 84, 92, 143, 172, 185e, 185f, 185g, 185m, 195, 200, 209, 217, 219, 229を参照]。

2件の実験室での研究報告があり、それらはRFエネルギーへの曝露が動物にガンまたはガン関連の傷害を引き起すかもしれないというものです。これらの研究は、Q23AおよびQ23Cで述べています。両研究は、基地局アンテナ付近の公衆の立ち入り可能区域で検出されるよりはるかに高いRFエネルギーレベルを使用しており、両研究とも確認の試みに失敗しました。

RFエネルギーに関する疫学研究では、全てのガンまたは特定の種類のガンとの一貫性のある関係は示していません(Q16を参照)。


22)RFエネルギーが流産や先天的欠損症を生ずることがあるという証拠はありますか?

間接的には、はい。全身を加熱させるのに十分な強いレベルのRFエネルギーに曝露すると、流産や先天的欠損症を生ずることがあります[185k]。携帯電話の基地局アンテナから生ずる電力は低すぎるので、そのような加熱を生じません。携帯電話の基地局アンテナからのRFエネルギーへの公衆曝露に関係する電力レベルで、RFエネルギーが流産や先天的欠損症に関係する、という実験室での証拠または疫学的証拠は全くありません[詳細は、3, 4, 5, 185k, 200 の参考文献を参照]。


23)RFエネルギーとガンに関する最近の科学実験室での研究から、何が示されますか?

新しい情報が絶えず出てきています。大きな注目を集める研究は、適宜研究別に項を設けます。例えば、マウスやラットのガンの研究はQ23AQ23Bで述べ、さらにDNA鎖破壊の研究はQ23Cで述べています。


23A)マウスを携帯電話のRFエネルギーに曝露するとリンパ腫が生ずるという1997年の報告。

1997年にRepacholi et al [30]が行ったオーストラリアの研究では、リンパ腫傾向のあるマウスを、ディジタル式携帯電話に使われる種類の強力だが断続的なRFエネルギーに18ヵ月間曝露すると、リンパ腫の発生率が上昇すると報告しました。他の種類の腫瘍の発生率では上昇は見られませんでした。使用した電磁界強度は、IEEE/NCRP/ICNIRPガイドライン(Q8, Q11)で勧告されている公衆曝露のガイドラインを超えていて、また携帯電話の基地局アンテナ付近で公衆が立ち入りできる区域に存在する強度をはるかに超えています。

2002年にUtteridge et al [136]は、正常なマウスでも、同じリンパ腫傾向のあるマウスでも、リンパ腫のこのような増加を再現できなかったと報告しました。

元になるRepacholi et al [30]の研究は、次のような多くの論点から批判されました。

  1. 研究でRFエネルギー曝露量(SAR)が定義されていなかったので、熱ストレスの可能性を除去できなかった。
  2. 正常な動物が使われていなかったので、リンパ腫傾向にするため遺伝子操作をした動物だけが受ける影響であったかどうかを判定できなかった。
  3. ただ一のRFエネルギー曝露量しか使われなかったので、曝露量−反応の本質は不明であった。
  4. 計画した研究の終りにまだ生存している動物にはリンパ腫はないと予想されていたが、ないという証明はなされなかった。

Utteridge et al [136, 155]の再現性調査は、上記批判に対処するために、次のように企画されました。

  1. RFエネルギー曝露量をもっとしっかりと規定でき、しかも非熱であると示し得るようにするため、違う型式の曝露システムを使用した。
  2. リンパ腫傾向のある動物はもちろん、正常な動物も用いた。
  3. 4つの異なる曝露量グループ(SAR 0.25、1.0、2.0、4.0 W/kg)を使用した。
  4. 研究の終わりに、生存している動物で腫瘍があるかを調べた。

1997年のRepacholi et al [30]の研究では、100匹のリンパ腫傾向のあるマウスを、パルスの900MHzのRFエネルギーに1時間/日、18ヵ月間、0.01〜4.2W/kgの範囲を変化するSARに曝露しました。リンパ腫の発生率は、疑似曝露していた類似グループのマウスに比べ2.4倍上昇しました。

2002年のUtteridge et al [136, 155]の研究では、480匹の正常マウスと480匹のリンパ腫傾向のあるマウスを、898MHzのGSM-変調RFエネルギーに1時間/日、24ヵ月間、0.25、1.0、2.0、4.0W/kgのSARに(各タイプ120匹のマウスを各SARに)曝露しました。リンパ腫の発生率で統計的に有意な上昇は見られませんでしたし、また統計的に有意な曝露量―反応の傾向は観察されませんでした。

Utteridge et alの報告についての5通の編集者へのレターと著者の回答が、2003年に出ました[155]。

齧歯(げっし)類動物をRFエネルギーに長期間曝露した研究が、少なくとも他に25件あるのは注意すべきです。これらのどの研究も過剰のリンパ腫を報告していません。詳細は、Q23Bを参照。


23B)齧歯(げっし)類動物を携帯電話のRFエネルギーに長期間曝露した研究。

齧歯(げっし)類動物をRFエネルギーに長期間曝露した研究は、25件以上あります。これらの研究は、齧歯(げっし)類動物をRFエネルギーに長期間曝露しても、リンパ腫(Q23A参照)、脳ガン(Q23C参照)、腫瘍一般などを誘発したり促進することはないらしい、と明らかにしています。齧歯(げっし)類動物を生涯曝露しても、寿命を縮めることや、突然変異を生じることはないようです。研究を以下に要約します。

1971年: Spalding el al [49]は、マウスを800MHz RFエネルギーにSAR 13W/kgで2時間/日、5日/週、35週間曝露しました。RF曝露グループの平均寿命は、擬似曝露グループよりも僅かに(有意ではないが)長いでした(ただし、"What's New"(最新情報)も参照)。

1982年: Szmigielski et al [50]は、マウスを2450MHz RFに2時間/日、6日/週、6ヵ月まで曝露しました。曝露は2〜3W/kgと6〜8W/kgで行いました。対照動物は、擬似照射した動物と「閉じ込めのストレス」(Stagg et al [105]を参照)を受けた動物との両方を含みました。RF曝露と閉じ込めによるストレスとの両方によって、皮膚や胸部で化学的に誘発した両腫瘍の発生を著しく加速しました。この研究の曝露量測定は不明確で、マウスが高い曝露量に曝露され生理的に重大な加熱を受けたようです。

1988年: Saunders et al [67]は、雄マウスを2450MHz RFエネルギー(電力密度 10mW/cu、SAR 4W/kg)に6時間/日、8週間で合計120時間曝露しました。処置の終わりに、そのマウスを、曝露していない雌マウスと交尾させました。妊娠率に有意な減少はなかったので、優性致死突然変異の増加はありませんでした。精原細胞の検査から、染色体異常の増加は見られませんでした。著者の結論は、「この実験において、雄マウスを2450MHzマイクロ波放射に長期間曝露しても、突然変異反応が誘発されることを示す証拠はない」ということです。

1992年: Chou et al [31]は、ラットをパルスの2450MHz RFに0.15〜0.40W/kg [8]で21.5時間/日、25ヵ月間曝露しました。寿命や死因に及ぼす影響は観察されませんでした。生存率に及ぼす影響はなく、ガン全体の増加が曝露したグループに見られました。対照動物における悪性腫瘍の割合は、この種族に対しては異常に低く、また良性腫瘍の増加は観察されませんでした。曝露した動物で2つの初期リンパ腫が見られ、対照動物でも2つ見られました。良性または悪性の脳腫瘍は、曝露したラットと対照のラットのどちらにも観察されませんでした。著者たちは次のように結論しました。「曝露した動物で過剰の初期悪性腫瘍があるという結果は、論争の的となります。しかしこの単一の結果について他のパラメーターを考慮して検討する場合、統計的差異が真の生体影響を反映しているかどうかは確定的ではありません。全体的結果として、生物学的に重大な影響で決定的なものはない、と示されます。...」

1994年: Liddle et al [51]は、マウスを2450MHz RFエネルギーに生涯にわたって曝露しました。マウスを、その生涯を通じて1時間/日、5日/週、2または6.8W/kgのいずれかで曝露しました。6.8W/kgで曝露したマウスでは寿命は著しく短くなりました(中央値572日 対 擬似曝露グループの中央値706日)。しかし2W/kgでRFに曝露した動物は、擬似曝露グループよりも僅かに(有意ではないが)長く生きました(中央値738日)。著者は、6.8W/kgでの曝露による加熱は寿命を縮めるほどの強度なストレスになると示唆しました。

1994年: Wu et al [44]は、マウスを、化学発ガン物質に曝露したのに加え、2450MHz RFに10mW/cu(10〜12W/kg)で曝露しました。曝露は、3時間/日、6日/週、5ヵ月間続けました。化学発ガン物質は、結腸ガンを引き起すものです。発ガン性物質だけで処置した動物と、発ガン性物質にRFを加えて処置した動物との間で、結腸ガンの比率の差異は見られませんでした。

1997年: Toler et al [33]は、乳腫瘍傾向のあるマウスをパルスの435MHz RFに1.0mW/cu(0.32 W/kg)で曝露しました。曝露は、22時間/日、7日/週、21ヵ月間続けました。マウスの生存率または乳腫瘍発生率に差異はありませんでした。曝露したグループと対照グループの間でどの種類の腫瘍でも比率に差異はありませんでした。特筆すべき点としては、曝露したグループと対照グループの間で、リンパ腫、白血病、または脳腫瘍の比率に差異がなかったことです。

1998年: Frei et al [32]は、乳腫瘍傾向のあるマウスを2450MHz RFにSAR 0.3W/kgで曝露しました。曝露は、20時間/日、7日/週、18ヵ月間でした。研究では、曝露したグループと対照グループの間で、腫瘍発生率またはマウスの生存率に差異は見られませんでした。

1998年: Frei et al [35]は2回目の研究を行い、前回と同じマウスモデルと同じ曝露処方を使用しましたが、前回より高いSAR 1.0W/kgを使用しました。再度、この研究でも、曝露したグループと対照グループの間で、腫瘍発生率またはマウスの生存率に差異は見られませんでした。どちらの研究でも、曝露したグループと対照グループの間で、リンパ腫、白血病、または脳腫瘍の発生率に差異はありませんでした。

1998年: Imaida et al [47]は、ラットに対し、肝臓ガンを誘発する化学発ガン物質を投与し、それからそのうち一部の数のラットを929MHz RFにSAR 0.6〜0.9W/kgで曝露しました。曝露は、90分/日、5日/週、6週間でした。RFに曝露したラットと化学発ガン物質のみを投与したラットの間では、肝臓ガンの比率に差異は見られませんでした。

1998年: 2回目の研究でImaida et al [48]は、1500MHz RFにSAR 2.0W/kgで曝露したラットにおいて、前回同様に肝臓ガンの促進がないことを報告しました。今回もまた、曝露は90分/日、5日/週、6週間でした。

1999年: Adey et al [19]は、ラットをパルス変調した837MHz RFに曝露しても、脳腫瘍の誘発や促進をしない、と報告しました。RF曝露は、妊娠したラットの全身を連続的にファーフィールド(遠方界)に曝露することから始め、離乳時期まで続けました。7週の齢に、頭部を局所的なニアフィールド(近傍界)に曝露するのを始め、この曝露を22ヵ月間(2時間/日、7.5分オン−7.5分オフ、4日/週)続けました。いく匹かのラットはまた、脳腫瘍を誘発する化学物質(エチルニトロソウレア、ENU)で処置しました。脳のSARの範囲は0.7〜1.6W/kg、全身のSARの範囲は0.2〜0.7W/kgでした。このSARの範囲は、体重の違いや動物の配置場所の違いによって生じました。脳腫瘍の数はRFに曝露したグループの方が擬似曝露したグループよりも少ないでしたが、この差異は統計的に有意ではなかったかもしれません。

1999年: Chagnaud et al [75]は、ラットを携帯電話のパルスのRFエネルギー(GSM)に曝露しても、化学的に誘発した乳ガンを促進しない、と報告しました。ラットは、化学発ガン物質に曝露してから別々の時間に、0.075または0.27W/kgで900MHzのGSM信号波に2時間/日、2週間曝露しました。腫瘍発生、腫瘍成長、あるいは動物の生存率への影響は観察されませんでした。

1999年: Higashikubo et al [76]は、脳腫瘍細胞を移植したラットをRFに曝露しても、その脳腫瘍の成長には影響しない、と報告しました。ラットは、835MHzの連続波RF、またはSAR 0.75W/kgで848MHzのパルスRFのいずれかに曝露しました。曝露は、4時間/日、5日間/週で、腫瘍移植以前の28日前から始め、腫瘍移植以後の150日後まで続けました。

2000年: Adey et al [40]は、ラットを連続波837MHz RFに曝露しても、脳腫瘍の誘発や促進をしない、と報告しました。変調が違うこと以外は、2000年の研究は1999年の研究と同じ企画と曝露プロトコル(詳細な実験計画)を用いていました[19]。

2001年: Zook and Simmens [73]は、ラットを連続波またはパルスの860MHz RFに1.0W/kgで曝露しても、脳腫瘍発生率には影響しない、と報告しました。曝露は、2ヵ月の齢に開始し、6時間/日、5日間/週、22ヵ月間行ないました。Zook and Simmensはまた、この同じRFプロトコルでは、化学的に誘発した脳ガンを促進しない、と報告しました。全体的なガンや特定のタイプのガン(リンパ腫を含む)において、統計的に有意な、RFの関連した増加は見られませんでした。

2001年: Jauchem et al [102]は、乳腫瘍傾向のあるマウスを、RF領域の周波数を含み超広帯域(UWB:ultra-wideband)周波数からなるパルスに曝露しても、乳腫瘍の発達または動物生存率に及ぼす有意な影響はない、と報告しました。組織病因の評価によって、調査したどの生体組織(リンパ腫および脳ガンを含む)でも、新生異常組織の数に及ぼす有意な影響はないことを明らかにしました。

2001年: Heikkinen et al [114]は、マウスをアナログ式またはディジタル式携帯電話で使われている種類のRFエネルギーに曝露しても、電離放射で誘発したガン(特にリンパ腫)の発生率は上昇しない、と報告しました。マウスを電離放射に曝露してから、パルス(GSMタイプ)または連続波(NMTタイプ)のRFに曝露しました。RF曝露は、1.5W/kg(アナログ信号)または0.35W/kg(ディジタル信号)で、1.5時間/日、78週間行いました。RFエネルギーに曝露した動物では、どの種類のガンの増加も観察されませんでした。

2001年: Imaida et al [117]は、日本のディジタル式携帯電話に使われている種類のパルスのRFエネルギーでは、マウスの化学的に誘発した皮膚ガンの発生率は上昇しない、と報告しました。Imaida et al [117]は、促進および(TPAによる)補助促進の両方のプロトコルで試験をし、どちらのプロトコルでも皮膚ガンの増加は見られませんでした。

2001年: Mason et al [116]は、マウスを94GHz RFエネルギーに曝露しても、化学的に誘発した皮膚ガンの促進または補助促進はない、と報告しました。

2002年: Bartsch et al [120]は、ラットを携帯電話のRFエネルギーに曝露しても、化学的に誘発した乳ガンを促進しない、と報告しました。ラットに対して、乳ガンを誘発する化学物質への曝露、パルスの900MHz RFエネルギーへの0.1mW/cu(SAR 0.018〜0.070W/kg)での曝露、この2つの曝露を順次行い、またどちらか片方を行いました。RF曝露は生涯行いました。良性または悪性の乳ガンの潜在または発生に及ぼす影響は見られませんでした。発表以前に(著者によるものではないですが)、この研究が乳ガン発生に及ぼす有意な影響を示すであろう、主張されました。

2003年: Heikkinen et al [171]は、マウスを携帯電話のRFエネルギーに曝露しても、紫外線(UV)で誘発した皮膚ガンを促進しない、と報告しました。マウスを紫外線に、または紫外線とパルスのRFエネルギーとに、52週間曝露しました。曝露は、849MHz(DAMPS方式)または902MHz(GSM方式)に対し0.5W/kgで1.5時間/日、行いました。紫外線だけで皮膚の腫瘍は増加しましたが、RFエネルギーを追加しても皮膚の腫瘍の発生率は有意に上昇することはありませんでした。

2003年: LaRegina [175]は、ラットを携帯電話のRFエネルギーに曝露しても、(脳ガンやリンパ腫を含む)ガン発生率や寿命への影響は生じませんでした。ラットを836MHzの連続波(FDMA)または848MHzのパルスの(CDMA)RFエネルギーに4時間/日、5日/週、2年間曝露しました。曝露は、ラットが6週の齢のときに開始し、2年間続けました。脳のSARは1.3W/kgでした。

2003年: Anane et al [177]は、ラットを乳ガンの発ガン物質(DMBA)や900MHzのGSM携帯電話の信号波に曝露しました。 曝露は、0.1-3.5 W/kgの範囲内で変動する6つのSARで2時間/日、5日/週で9週間行いました。化学的に誘発した乳ガンの統計上有意な促進は、1つの実験で1.4W/kgのとき観察されましたが、そのような増加は、2番目の実験で、即ち、それよりSARが高くても低くても、見られませんでした。曝露量-反応の関係はありませんでした。

2004年: Anderson et al [203] は、ラットを0.16または1.6W/kgの(頭部SAR)で1600MHz RFエネルギー(イリジウム信号)に曝露しても、ガン発生率への影響がなく(脳ガン、乳がんまたは白血病の発生率への影響がないこと含む)、全体的な健康または生存率に影響を及ぼさない、と報告しました。曝露は妊娠したラットの遠方界曝露で(2時間/日、7日/週)始めましたが、離乳するまで続けました。曝露は、離乳後再び始め(真正面から、近傍界、2時間/日、5日/週)、ラットが2才になるまで続けました。

2005年: Shirai et al [228]は、ラットを1439MHzの携帯電話信号波に曝露しても、化学的に誘発した脳腫瘍や脊髄腫瘍の発生率を高めない(促進しない)、と報告しました。妊娠したラットを、妊娠の18日目に脳腫瘍の化学発ガン物質(N-エチルニトロソウレア、ENU)に曝露しました。その子どもたちの一部は、その次に携帯電話信号波に90分/日、5日/週で104週間曝露しました。RFエネルギーへの曝露は5週齢目に開始しました。脳のSARとして2種の曝露レベル(0.67W/kg および 2.0W/kg)を使用しました(全身のSARは0.4W/kgより小さかった)。 携帯電話信号波への曝露は、体重、摂食量または生存率において差異を生じませんでした。携帯電話信号波への曝露によっても、脳腫瘍や脊髄腫瘍における発生率や種類の変化は生じませんでした。


23C)動物を携帯電話のRFエネルギーに曝露すると動物の脳細胞にDNA損傷を生ずるという1995年/1996年の報告。

細胞のDNAに損傷を与え得る病因は、発ガン性の可能性があると考えられます[41]。DNAに損傷を与え得る病因は、遺伝子毒性物質と呼ばれたり、あるいは遺伝子毒性活性があるといわれます。一般に、SARが熱(加熱)傷害を生ずるような高い値でなければ、RFエネルギーに曝露した細胞の研究では遺伝子毒性の証拠は見られません[3, 4, 5, 185f, 185m, 200, 224]。

1995年と1996年にLai and Singh [25, 26]は、RFエネルギーへの曝露がラットの脳細胞にDNA損傷を生ずる、と報告しました。これらの実験では、ラットを、パルスの2450MHzのRFに0.6と1.2W/kgで2時間曝露しました(これが「携帯電話」型の信号波ではないのに注意)。曝露の後に動物を殺しその脳細胞にDNA傷害があるかを分析しました。著者は、曝露後4時間経過したときのDNA鎖破壊の増加を報告しました。

Lai and Singh [25, 26]の研究は、次に示すように、独立した別の機関による非常に多くの確認の試みに失敗しています(ただし、"What's New"(最新情報)も参照)。

最近(2003年以降)のその他の、RFによる遺伝子毒性の可能性に関する研究でも、以下のようにDNA損傷の証拠を報告していません(ただし、"What's New"(最新情報)も参照)。

対照的に、最近(2003年以降)の数件の研究では、以下のようにRF曝露に関する証拠がDNAを損傷するかもしれない、と報告しています(ただし、再度"What's New"(最新情報)も参照)。

2003年末に発表された論評において、Merz [185m]の結論は:

「現在得られている証拠の重要性(weight of evidence)から判断すると、短期および長期の曝露時間でさまざまな周波数や変調に対して、測定可能な温度上昇がある生体試料を加熱しない(または、ある瞬間には加熱がある)曝露レベルで、RF曝露は次を誘発することはありません。(a) DNA鎖破壊、(b) 染色体異常、(c) 姉妹染色分体交換(SCEs)、(d) DNA対合成、(e) 表現型突然変異、あるいは(f) 形質転換(ガン類似の変化)。RF曝露が小核形成を誘発するという実験的証拠は限られたものがありますが、誘発しないという証拠は豊富にあります。RF曝露は基本損傷がないことを示しDNA切除修復を誘発しないという証拠があります。RFエネルギーは共同発ガン物質または腫瘍促進剤でもないことを示す証拠はもちろん、RFエネルギーがUV(紫外線)曝露によるチミン2量体誘発後にDNA切除修復を抑制しないという証拠もあります」

2004年に発表された論評において、Vijayalaxmi and Obe [224]は遺伝子毒性データを次のように要約しました。

「1990年〜2003年の間に多くの調査が、齧歯(げっし)類動物、培養齧歯類動物、ヒト細胞を使って実行され、またその多くの調査は、無線周波(RF)放射への曝露による遺伝子毒性の可能性を確認するために、ヒトの血液リンパ球を新たに収集しました。これらの調査の大半の結果(58%)から、疑似曝露や非曝露の細胞と比較して、RF放射に曝露した細胞では(DNA鎖破壊、染色体異常や小核や姉妹染色分体交換(SCE)の発生率から評価して)、遺伝物質に対する損傷の増加は示されませんでした。いくつかの調査(23%)では、RF放射に曝露した細胞でそのような損傷の増加が報告されました。その他の調査(19%)からの観察では結論は出ませんでした。...」

「RF放射への曝露による遺伝子毒性の可能性に関し、異論のあるこれらの観察を生じる元となる要因を確認するためには、適切な統計処理能力がありよく調整の取れた複数のセンターによって行われた協同研究からのデータが必要となるでしょう。そのような研究でたぶん不可欠なことは、RF放射曝露が1〜5 W/kgの範囲のSARレベルで適切な温度管理と適正な曝露量測定によって唯一の研究所で行われることでしょう。遺伝子毒性の多様なエンドポイント(例えば染色体異常、小核、SCE)およびヒト起源の多種類の細胞(例えば血液リンパ球、繊維芽細胞、腫瘍細胞)を検査すべきです。 さまざまな遺伝的背景のある細胞(例えばAT遺伝子関しては、普通、ヘテロ接合、ホモ接合)を検査するのも有益かもしれません」


23D)携帯電話のRFエネルギーは遺伝子毒性であると示唆する欧州連合による2004年の報告(REFLEX報告)。

2004年の終わり頃に欧州連合(EU)は259ページの文書(REFLEX報告と呼ぶ)を公表しました。それはRFエネルギーと電力周波電磁界による遺伝子毒性の可能性に関し、EUが資金助成した一連の研究をまとめたものです。遺伝子毒性に対する何らかの証拠が、ある条件下で、しかもある細胞系におけるあるエンドポイントに対して、報告されました。その研究作業の大部分はピアレビュー(論文審査)された文献にはまだ現れていません。
報告は、次のウェブサイトにあります。http://www.itis.ethz.ch/downloads/REFLEX_Final%20Report_171104.pdf

要約すると:

報告の結論は次の通りです。

「総合すれば、REFLEXプロジェクトの結果はもっぱらインヴィトロ(培養試験管内)の研究から得られました。それゆえその結果は、現在有効な安全制限値よりも低いRF-EMF曝露が人々の健康にリスクを生じるという結論に対して、ふさわしいものではありません。 しかしそのような仮説は可能性のある範囲内により近づくよう動かされます。さらに動物や人間の機能障害や慢性疾患などの発生根拠となり得るような病態生理学的メカニズムについて、気づいていないと主張する正当な理由は今ではもう存在しません」


24)人体は携帯電話の基地局付近で受けるよりも多くのRFエネルギーを発生していますか?

この主張は、行われていて、ある狭い技術的意味では正しいですが、比較するとかえって誤解を招きやすくなります。

例えば、2003年の消費者向けファクトシートで、オーストラリア通信局は次のように記述しました。

「-273℃よりも高い温度の全ての物体は、全ての波長の[電磁放射]を放出し、それは黒体放射と呼ばれています。この放射の一部は、マイクロ波帯域で起こります。人体からの黒体放射のマイクロ波成分は、約0.3 [マイクロW/cu]と計算されます。3G基地局から200メートル離れたところでの放射レベルの測定平均値は、人体の黒体放射と比較すると、約0.015 [マイクロW/cu]で、20分の1の小ささです」

300GHz(300,000MHz)より低いところで人体の放出する全黒体放射を合計したとしても、上記の計算は正しいです。比較すると誤解を招きやすいのは、ほとんど全ての黒体放射がこの周波数範囲の上端部(赤外線に近い)で発生するということです。この周波数は、携帯電話で使われる周波数よりはるかに高いです。

移動体通信で使われる周波数範囲(0.5-2.4 GHz, 500-2400 MHz)よりも高いところで、人体の放出する実際の黒体放射は、0.00001マイクロW/cuより小さいです。


25)さらに多くの情報はどこから得られますか?

さまざまなRF基準の文書[3, 4, 5, 200]には、広範囲にわたる参考文献が記載されています。最近のこの分野の論評を以下に掲げます。


26)誰がこれらの質問と回答を書きましたか?

このFAQシートは、ウィスコンシン医科大学の放射線腫瘍学、放射線医学ならびに薬物学/毒物学の教授、John Moulder博士により書かれました。Moulder博士は、1970年代末以来、非電離放射および電磁界の生体影響に関し、教育・講義に携わり、書物を著わしてきました。

このFAQのオリジナル版は、ウィスコンシン州ブルックフィールド市との契約のもとに1995年に書かれました。FAQは、ウィスコンシン医科大学の補助教材として、1995年以後継続し拡張しました。ウェブサーバーとウェブ管理は、ウィスコンシン医科大学総合臨床研究センターから提供されています。本文書を作成し維持することに対し、ウィスコンシン医科大学外部のいかなる個人、機関、グループあるいは法人からの支援は受けませんでした。

このFAQの一部は、次のピアレビュー(論文審査)された発表文献から引用しました。

Moulder博士は、“Powerlines and Cancer”(送電線とガン)および“Static EM Fields and Cancer”(静電磁界とガン)に関する同様の“FAQ”文書を維持しました。


技術注記

1) 米国のPCS(Personal Communication Systems)電話はハンドヘルドの双方向無線機器であり、アナログ式送信システム(これは少し古い携帯電話で使用)よりもディジタル式送信システムを使用しています。米国では、少し古い携帯電話のほとんどは860〜900MHzで使われ、他方、PCS電話は1800〜2200MHzで使われています。携帯電話とPCS電話、またそれらの基地局アンテナは、外観では似ています。米国では、「コードレス」電話は45〜2500MHzの範囲の周波数で使われ、「市民バンド(CB)」双方向無線機器は約27MHzで使われます。あるコードレス電話は、ある携帯電話と同じかそれ以上の電力レベルで使われます。

国際注記:世界では、他のさまざまな周波数が、アナログ式とディジタル式両方のハンドヘルド・トランシーバーや移動無線機器で使われていて、それらのシステムには別の名前がつけられています(詳しくはStuchly [61]の表1参照)。最も普通の周波数は800〜900MHz(アナログとディジタル)と1800〜2000MHz(ディジタル)ですが、低い45MHz程度から高い2500MHz程度までの周波数を使うハンドヘルド・トランシーバーがあります。ハンドヘルド・ユニットからの出力電力は、めったに2Wを超えませんが、法執行官(警察・検察・捜査官など)が使うような車載ユニットからの出力電力は、100W程度になることがあります。

2) 電力周波電磁界の生体影響についての詳しい議論は、次を参照して下さい。 JE Moulder: Power-frequency fields and cancer. Crit Rev Biomed Engineering 26:1-116, 1998.

3) IEEE Standards for safety levels with respect to human exposure to radio frequency electromagnetic fields, 3 kHz to 300 GHz, IEEE C95.1-1991(1999 Edition), The Institute of Electrical and Electronics Engineers, New York, 1999.

4) International Commission on Non-Ionizing Radiation Protection: Guidelines for limiting exposure to time-varying electric, magnetic and electromagnetic fields. Health Phys 74:494-522, 1998.

5) National Council on Radiation Protection and Measurements: Biological effects and exposure criteria for radiofrequency electromagnetic fields. NCRP Report No. 86, 1986.

6) RFエネルギーの生体影響は、電力が吸収される割合に依存します[185b, 185c]。このエネルギー吸収率は、比吸収率(specific absorption rate:SAR)と呼ばれ、W/kg(ワット/キログラム)で測定されます。SARは定まった方法で測定するの難しいので、通常測定するのは平面波の電力密度です。そのため、平均の全身SARは、電力密度の曝露から計算できます(詳細は、Stuchly [61]を参照)。

本文では、電力密度の単位をmW/cu(ミリワット/平方センチメートル)で示します。電力密度は他に次のように表示することができます。

W/u(ワット/平方メートル)、ここでの10 W/u = 1 mW/cu
µW/cu(マイクロワット/平方センチメートル)、ここでの1000 µW/cu = 1 mW/cu
nW/cu(ナノワット/平方センチメートル)、ここでの1000 nW/cu = 1 µW/cu


7) 人がRFエネルギーを吸収するのは1800MHzよりも860MHzの方が多いために、ある周波数での電力密度のガイドラインは他の周波数より厳しくしてあり、実際に重要なのは吸収した電力量です[8]。

8) 特に、ICNIRP基準は、800MHzで0.40mW/cuであり、2000MHzで0.90mW/cuです。他方、NCRPガイドラインは、これらの同じ周波数で0.57mW/cuと1.00mW/cuです。

9) Guidelines for Evaluating the Environmental Effects of Radiofrequency Radiation (FCC 96-326), Federal Communications Commission, Washington, D.C., 1996. FCC web pageにあります。

10)
国際注記--米国以外の国々における携帯電話の基地局アンテナからのRFエネルギーへの公衆曝露の基準。以下のリストは、包括的ではなく、また必ずしも最新のものとも限りません。下記情報は、各国の適当な規制当局に尋ねて確認すべきものです。Erdreich and Klauenberg [108]も参照。


11) 異なる周波数の複数の送信アンテナがあるところでは、ANSI/IEEE [3]またはFCC [9]基準を確実に遵守する方法は複雑です。しかしこれらの状況で遵守をチェックする簡単な方法もあります。それは、全てのアンテナの電力密度を加算して、最も厳しい電力密度基準を適用することです。この簡単なチェックに合格するものは、かなり厳しくかつ複雑なテストにも合格するでしょう。この簡単なチェックに不合格なものは、IEEE/FCC/ICNIRP基準に規定されているかなり厳しくかつ複雑な方法によって、分析されなければなりません。

12) 特に、潜在的に危険な影響は、SARが4W/kgより小さいところでは、一貫性のあるものとして示されていません[185a]。
- 携帯電話の周波数で、4W/kg程度の高いSARに達するには電力密度20〜100mW/cuが必要でしょう。
- 最悪の場合の仮定(複数のローゲインのアンテナ、高いERPのアンテナ)では、FCC適合基地局付近で公衆の立ち入りできる場所での人のSARは、0.01W/kgよりも小さいでしょう。
- 現実の状況では、そのような基地局付近の人に対するSARは、0.0005W/kgより小さいでしょう。

13) ANSI、ICNIRP、NCRPは全て、一般公衆の全身曝露は全身SAR 0.08W/kgより低く保つべきであることで一致しています。それらの基準で一致していない点は、電力密度に対するSRAの特定の関係、即ち、曝露量測定と生物物理学的モデリングの結合から定まるある関係です。


14) ほとんどの新設基地局で使われているハイゲインセクターアンテナで大事な領域は、アンテナの前面側だけです。多くの古い基地局で使われているローゲインアンテナで大事な領域は、全方向にあるでしょう。この違いは、各種アンテナからのRFパターンを調べればもっとはっきりします(Q14Dを参照)。残念ながら、あるアンテナのRFエネルギーパターンとゲインは、その外観を見て判断できるとは限りません。

最短安全距離についてのこれらの一般的な声明は、基地局アンテナのセクターあたりの全体のERP(実効放射電力)は2000Wを超えないだろう、と推定しています。米国では、このことは一般的に事実であり、また米国FCCガイドラインのもとでは、全体のERPが約2000Wを超えるサイトは、特別なサイト評価が必要になるでしょう[注記15を参照]。

国際注記:もっと強力なアンテナがどこか他のところで使用されるかもしれません。そのような場合には、最短安全距離はもっと長くなるでしょう。最短安全距離は、同じセクター側に放送しているアンテナが複数あるときにも、もっと長くなるでしょう。

15) 特に、1996年のFCC規制は、下記に対する評価を要求しています。

「屋上」は次のように定義されます。「建造物の屋根、またはそれ以外の屋外の一番高い1ヵ所か複数ヵ所のレベル。その建造物とは、作業場所または住居として使われていて、しかも作業員または一般公衆が立ち入りしてよい所です」 。給水塔の上に取付けるのは「非-屋上」と考えられる、と私は思います。
「全電力」は次のように定義されます。「施設の同じ場所に配置され同時に稼動している全ての送信機のERPまたはEIRPの合計。[除外]の判断基準を適用するとき、全ての方向の放射を考慮に入れるべきです。セクター化した送信アンテナを使用している送信施設の場合には、申請者と免許保持者は、ある与えられたセクター内の全ての送信チャネルに、その判断基準を適用すべきです。ただし、その際、指向性の強いアンテナでは、他の方向のERPまたはEIRPの合計への寄与はほとんどないことに留意すべきです」

2003年6月に米国FCCは、基地局の種類によってRF曝露評価が必要になる規則の修正を提案しました(Docket Number 30-137)。基地局のRFエネルギー基準に影響する提案の部分には明らかに編集/印刷上の誤りがいくつかあります。提案された規則を予め読むと、下記の状況のときに評価が要求されるであろうということが示されます。

「分離距離」は、次のように定義されます。「一般公衆の人の立ち入りが許される区域の方向に向って、送信アンテナの放射構造物のどこか1部分からの最短距離」
「全電力」は、はっきりと定義されていません(FCC提案のこの部分には明らかにいくつかの編集上の誤りがあります)。それはたぶん次のように定義されるつもりでした。「単独の免許保持者が所有し稼働する送信機で、同じ場所に配置され同時に稼動している全ての送信機に関して、... 実効放射電力に換算した送信稼働している全電力」
注意:この全電力の定義は、 一つのサイトの同じ場所に配置した全てのアンテナの合計ではなく、単独のオペレーターに適用されるという点で、現行の規制の全電力とは違うでしょう。これも編集上の誤りかもしれません。

国際注記:厳密に言えば、これらの判断基準は米国にあてはまるだけです。そうはいうものの、これらの判断基準は、どのタイプのアンテナサイトがRF基準に最も違反しそうであるかを判断するのに、有効です。

16) RFエネルギーの生体影響の議論でしばしば出て来る一つの相違は、「非熱」と「熱」の影響の相違です。これは、影響のメカニズムに関連します。即ち、非熱効果はRFエネルギーと生体との直接相互作用の結果であり、熱効果は加熱(heating)の結果です。が、それらのメカニズムは解明されていません。そのような影響に対する「熱」と「非熱」のメカニズムの相違を導き出そうとするのは難しいです(また、あまり有効ではありません)。Valberg [20]、Foster [82]、Pickard and Moros [104]、Adair [154]も参照してください。

17) これらの影響には、脳の電気活性度の変化、酵素活性度の変化、カルシウムイオンの細胞膜通過輸送の変化が含まれています[詳細は、3, 4, 5, 200を参照]。また、Hyland [93]も参照。

18) 2000MHz(米国のPCS電話の周波数)に対して、900MHz(米国のアナログ式携帯電話の周波数)で人体の吸収量が増加するのは、アンテナから離れたところでの全身曝露にあてはまります(基地局アンテナサイト付近の公衆曝露の場合)。この差異は、アンテナに極く接近したところでの体の部分的曝露にはあてはまらないかもしれません。

19) WR Adey, CV Byus et al: Spontaneous and nitrosourea-induced primary tumors of the central nervous system in Fischer 344 rats chronically exposed to 836 MHz modulated microwaves. Radiat Res 152:293-302, 1999.

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41) KR Foster, LS Erdreich and JE Moulder: Weak electromagnetic fields and cancer In the context of risk assessment. Proc IEEE 85:731-746, 1997.

42) 建物内の信号強度は、屋外の道路で測定されたレベルに比べて60〜95%減少することが測定からわかります。一般に、信号波の減衰は建物の高いところよりも地上レベルの方が大きく、また減衰は低い(800〜900MHz)周波数よりも高い(1800〜2000MHz)周波数の方が小さいです(JD Parsons, The Mobile Phone Propagation Channel, Wiley and Sons, NY, 1992)。

43) 最悪の場合の計算(低減衰の屋根に、直接取り付けた2000W ERPローゲインアンテナ)から、下の床では0.10mW/cuより低い電力密度が予想されます。もっと典型的な屋上取り付け(典型的な屋根の2m上に取り付けた1000W ERPハイゲインアンテナ)についての計算から、下の床では0.001mW/cuより低い電力密度が予想されます。

集合住宅の部屋真上の屋上周壁外部にハイゲインセクターの基地局アンテナを取り付けてある建物で、最上階の部屋で実際に測定すると、最大の電力密度が0.0004mW/cuと計測されました[70]。屋上基地局(アンテナは主屋根の上3m)真下の階の廊下では、最大の電力密度が0.008mW/cuと計測されました。両方の最大値から推定されるのは、基地局がそれらの最大容量で稼動している、ということです[70]。

2000年には、NRPB(英国)[85]は、多種多様な携帯電話の基地局アンテナを屋上に設置した、複数の集合住宅建物および学校で測定しました。これらの建物の最上階の床では、全ての発生源からのものを合わせた最大のRF電力密度は0.0001mW/cuでした。

44) RY Wu et al: Effects of 2.45 GHz microwave radiation and phorbol ester 12-O-tetradecanoylphorbol-13-acetate on dimethylhydrazine- induced colon cancer in mice. Bioelectromag 15:531-538, 1994.

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著作権の注意

このFAQは、John Moulder, Ph.D. およびMedical College of Wisconsin(ウィスコンシン医科大学)に著作権©(1996〜2006年)があり、インターネット利用者の間で役に立ち入手できるように作成してあります。

このFAQの一部は次の論文から引用しましたので、その部分はその論文の著作権により保護されます。

修正しない限り、この文書を電子媒体および印刷形式で複製し再配布することは許可されます。John Moulderの明確な書面での許可がない限り、このFAQは、電子媒体、CD-ROMまたはデータベースを含むいかなる媒体でも販売することはできません、あるいは、印刷して発行することもできません。


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日本語訳FAQ掲載および英文FAQ中止の経緯

日本語訳FAQ掲載:日本語訳FAQ「携帯電話の基地局(アンテナ)と健康」の元の英文FAQ “Mobile Phone (Cell Phone) Base Stations and Human Health”のウェブ公開は、版7.7.5(2006年8月13日更新)を最後に下記の通り中止となりました。しかし、内容は基本的事項や解説など参考になるところが多く中止するのは惜しいため、日本語訳FAQは版7.7.5の訳をそのまま継続してここに掲載しています。
この英文FAQは、米国ウィスコンシン医科大学放射線腫瘍学教授 John Moulder 博士が、ピアレビュー(論文審査)を通った学術研究論文をはじめ諸外国の政府報告などに基づき、携帯電話の基地局(アンテナ)からの電磁界(または電磁波や電波などとも呼ばれる)による健康影響について平易に解説されたものです。 これまで最新の研究論文や論評論文、あるいは政府報告や電磁界防護規制等を紹介するため更新が幾度もなされ、その都度日本語訳FAQも翻訳更新を繰り返してきました。

英文FAQ中止: Moulder 博士が同医科大学生向けに作成され、さらに多くの方々に利用されるようこれまでインターネットで公開されていた、電磁界と健康に関する3つの英文FAQ(この日本語訳FAQの他、Power Lines and Cancer FAQs :送電線とガンのFAQ、Static Electromagnetic Fields and Cancer FAQs:静電磁界とガンのFAQ)
は、惜しまれながら2007年9月末に公開が中止となりました。
2005年8月に Moulder 博士は、NIH (米国衛生研究所)から研究助成金を受けて、同医科大学内に設立された放射線テロ医療対策センターの所長 (Director of the NIH-funded Medical College of Wisconsin Center for Medical Countermeasures Against Radiological Terrorism) に就任されました。この新しい仕事のために、これら英文FAQの情報を最新状態に維持するのに必要な時間を割くことができず中止に至った、と伺いました。



(訳者による参考注記) 日本語訳FAQ中の英字略語および一部の医学・疫学関連用語について、以下の(1)「略語集」および(2)「用語説明」にまとめました。

(1)略語集

略語
英語表記
日本語表記/説明
AM amplitude modulation 振幅変調
ANSI American National Standards Institute 米国規格協会
ARPANSA

Austrarian Radiation Protection
and Nuclear Safety Agency

オーストラリア放射線防護・原子力安全庁
AT Ataxia-Telangiectasia 毛細管拡張性運動失調症
BBB blood-brain barrier 血液脳関門
CB citizen's band 市民バンド無線、市民帯無線
CDMA code division multiple access 符号分割多重接続
CNS central nervous system 中枢神経系
CW continuous wave 連続波
DAMPS Digital Advanced Mobile Phone System (北米)デジタル式高度移動電話方式
(アナログ式のAMPSから派生)
DMBA dimethylbenzanthracene ジメチルベンツアントラセン(化学発ガン物質の一つ)
DNA deoxyribonucleic acid デオキシリボ核酸
(遺伝情報保有・伝達物質、遺伝子の本体)
EEG electroencephalogram
脳波図
electroencephalograph 脳波計
EIRP equivalent isotropically radiated power
等価等方放射電力  
ELF extremely low frequency

超低周波(30〜300Hzの周波数帯)

EMF electromagnetic field 電磁界
ENU ethylnitrosourea エチルニトロソウレア(化学発ガン物質の一つ)
EPA Environmental Protection Agency 米国環境保護局
ERP effective radiated power 実効放射電力
et al ( = and others) およびその他
EU European Union 欧州連合
FAQ frequently asked questions 問合せの多い質問を集めた問答集
FCC Federal Communications Commission 米国連邦通信委員会
FDA Food and Drag Administration 米国食品医薬品局
FM

frequency modulation

周波数変調
G3 3rd generation 第3世代携帯電話通信システム
GSM Global System for Mobile Communication 汎欧州ディジタル携帯電話通信システム
HPA Health Protection Agency 英国健康保護局
HVAC high voltage alternating current 高圧交流
ICNIRP International Commission on
Non-Ionizing Radiation Protection
国際非電離放射線防護委員会
IEEE Institute of Electrical and Electronic
Engineers
(米国)電気電子学会(IEEE)
(IEEE東京支部の定めた日本語表記)
IEGMP Independent Expert Group on Mobile Phones (英国)携帯電話独立専門家グループ
(スチュアート委員会とも呼ぶ)
IR infrared 赤外線
MRI magnetic resonance imager 磁気共鳴映像法
MW microwave マイクロ波(波長が1cm〜100cmの電波)
NCRP National Council on Radiation
Protection and Measurement
米国放射線防護測定審議会
NEJM the New England Journal of Medicine (米国の権威ある医学専門誌)
NMT

nordic mobile telephone

北欧式アナログ携帯電話システム(1981年に商用化)
NRPB National Radiological Protection Board 英国放射線防護庁(2005年4月1日から健康保護局に
合流し放射線防護部:Radiation Protection Division)
PCS personal communications system

パーソナル通信システム
(1.9GHz帯電波を使うディジタル移動通信システム)

RF radiofrequency 無線周波(10kHz〜30GHzの周波数帯)、無線周波数
RFR radiofrequency radiation 無線周波放射

RR

relative risk 相対リスク、相対危険、相対危険度
SAR

specific absorption rate
specific energy absorption rate

比吸収率
比エネルギー吸収率
SCE sister-chromatid exchange 姉妹染色分体交換
TDMA time division multiple access 時分割多重接続
TPA terephthalic acid テレフタル酸
UHF ultrahigh frequency 極超短波(300MHz〜3GHzの周波数帯)
UMTS Universal Mobile Telecommunications System 欧州の第3世代携帯電話通信システム

UV
UVR

ultraviolet radiation 紫外線
UWB ultrawideband 超広帯域
VHF very high frequency 超短波(30〜300MHzの周波数帯)
WTR Wireless Technology Research (米国)無線技術研究(研究プロジェクトまたは研究組織)


(2)用語説明
(医学・疫学関連用語)
用語
用語の説明
アポプトーシス
(apoptosis) 細胞の核が細分化され細胞が消滅する細胞死。アポトーシスともいう。
インヴィトロ
(in vitro) 生体外で、細胞培養で
インヴィヴォ
(in vivo) 生体内で、動物で
エンドポイント
(endpoint) 健康などの終末点
偽陽性
(false positive) 健康な被検者を誤って疾病あり(陽性)と分類した検査結果
相対リスク
(relative risk: RR) 相対リスクは、危険因子への曝露群の症状発生率(A)と非曝露群の症状発生率(B)の比(A/B)で表される。相対危険、相対危険度ともいう。
バイアス

真の値と観察で得られた値との差である誤差は、標本誤差、偶然誤差、系統誤差に分けられ、真の値との差に方向性のない誤差は偶然誤差、方向性のある誤差は系統誤差と呼ばれる。疫学では、この系統誤差をバイアス、偏りと呼ぶ。本文記載の下記バイアス(選択・情報・報告)以外にも多くのバイアスに区分される。
・選択バイアス(selection bias): 観察する集団が母集団の代表でなく、特定の傾向・方向などがある。
・情報バイアス(information bias): 観察する集団から得られる情報が正しくない。例えば、曝露測定や結論の偏りに起因して正確でない情報となる。
・報告バイアス(reporting bias): 観察する集団からの特定の情報を選択制御することによって生じる。
・ 思い出しバイアス(recall bias):曝露や出来事を思い出すのが対照者と症例者で異なる場合に生じる。疾病のある患者は曝露があったか否かを注意深く考える傾向にある。